先日行われたSIGMAのイベントで、話題のフルサイズミラーレスカメラ「SIGMA fp」を触ってきました。同社「50mm F1.4 DG HSM」を装着しての持ち出し撮影です。
与えられた時間は60分。圧倒的に短時間なので、機能や写りを細かくチェックするよりも、第一印象として何を感じるかに集中。とりわけ、7年来のX-Proユーザー目線を盛り込むことに力点を置いて、お伝えしようと思います。
というわけで以下、作例とともにお届けします。
SIGMA fpの外観、操作性など
フラットな四角い箱のホールド性
本体外観は、ほぼ出っ張りや凹凸がないフラットな「箱」といった趣。X-Pro2も同じような印象を持ちましたが、SIGMA fpの方が一層フラットに仕上がっています。
軍艦部にレイアウトされた各種操作ボタンやダイヤル類は、大きくはみ出すことなく、1つの平面内にスッと収まっています。とっても上品。amadanaのプロダクトと共通したデザイン言語を感じます。
背面部も同様。液晶モニター下のボタン類は一段凹んだ部分に並んでいるため、横から見れば、やはりフラットな面が形成されています。
あまりにフラットなので、お世辞にもホールド性が高いとは言えません。
特に、今回お借りした「50mm F1.4 DG HSM」のような重厚長大なレンズとの組み合わせでは、短時間の使用でもつらさを感じます。
さらに言えば、ファインダーが無く3点支持が使えないのもしんどい。
別途専用ハンドグリップ「SIGMA HAND GRIP HG-11」を装着して、ようやく安定した撮影に臨めます。
X-Pro2に搭載されているダイヤルは、それぞれが操作しやすいよう、適度に出っ張って配置されています。グリップとファインダーも標準搭載。ホールド性は確実にX-Pro2の方が上です。
コンパクトなボディの中に、機械がギュッと凝縮
本体の外形寸法は、112.6×69.9×45.3mmと非常にコンパクト。APS-C機のX-Pro2よりも、ひと回り以上小さくて驚きました(比較写真を取り忘れてしまいました)。
重さも422g(SDカード, バッテリー込)で、やはり495g(SDカード, バッテリー込)のX-Pro2より軽い。
しかもコンパクトな分、手に伝わる質量感がSIGMA fpにはあります。機械がギュッと凝縮されたような感触。その昔、フィルムカメラのRollei35を手にした時のことを思い出しました。
絵作りを楽しもう!そんなボタンレイアウト
各種操作ボタン及びダイヤルは、縦横一列のL字型と極めてシンプルなレイアウト。面積的に、これしか選択肢が無かったんじゃないかと想像します。
よく使うであろう機能がボタンとして独立しているのは、個人的には嫌いじゃありません。今回の撮影でも、頻繁に[TONE]や[COLOR]ボタンを使用しました。この位置にあるおかげで、積極的に画作りを楽しむ気にさせてくれます。
けれども「Scalable(変幻自在の拡張性)」を標榜するなら、Fnボタンにしても良かったのかな、とは思いますね。もしかして設定変更できるのかな?
[MODE]ボタンに触れてしまう問題
操作性は概ね良好ですが、撮影中に右下の[MODE]ボタンが不意に発動するのは唯一の不満点。どうやら右手親指付け根の盛り上がった部分が当たっていたようです。手相で言えば、金星丘の部分。
僕の手の大きさが原因なのか、ボディが小さいからなのか。はたまたその両方なのか。
わざわざSIGMAロゴを挟んでのレイアウトには、誤操作を防ぐ狙いがあったはず。なので余計に残念です。
フロントヘビーで、街角スナップはキツイ
先述の通り「50mm F1.4 DG HSM」との組み合わせでは、かなりのフロントヘビー。首にぶら下げると、レンズの先は常に地面を向いている状態です。左手でしっかりレンズを支えるのは絶対必須の作法です。
X-Pro2で言えば「XF55-200mmF3.5-4.8 R LM OIS」との組み合わせが近いバランスかな。街角スナップ用途で使えないことはありませんが、他に優れた単焦点レンズがあるため、出番は少なめです。
ちなみにキットレンズの「45mm F2.8 DG DN」だと、フロントヘビーにはならないようでした。Artラインでも、これぐらいコンパクトなレンズが発売されれば良いですね。
SIGMA fp × 50mm F1.4 DG HSMで撮影|写真と雑感
少ないショットの中でも強く感じたのが、画が「余裕」と「丁寧」で成立していること。
「余裕」については、センサーサイズに拠るところが大きいのは間違いありません。解像感や階調性において、APS-CセンサーのX-Pro2と比べると、ひとつ上のレベル。
ですが、より大きなフォーマットのGFX 50Rよりかは下回る印象です。見事にセンサーサイズ通り。
ただFUJIFILMの2機種と比べて、清涼感のある爽やかな画作りを得意とするようです。ハイキーが結構踏ん張ってくれています。この辺りはレンズの描写力とも密接に影響し合っているのでしょう。
この日は雨上がりで、まだ湿気が多く残っていました。X-Pro2で撮影すると、もう少しコテッとした画になりそうですが、SIGMA fpはあくまでも爽やかな描写をします。
描く線は繊細で、均一に輪郭をなぞります。画面の隅々まで破綻がない。色味においても過度な表現は避け、対象を忠実に塗り分ける。こんなところに「丁寧」さを感じます。
ひょっとしたらFoveonセンサー好きの方にとっては、コレジャナイ感を抱く写りなのかもしれません。
SIGMA fpのベイヤーセンサーは、クセのない素直で真っ直ぐな写りをするセンサーです。
ボケも丁寧ですね。ピントピーク部分から、スゥッと滑らかに輪郭が消失していく。
優しく、柔らかく、丁寧に、主題を浮き上がらせます。
背景がゴチャッとした場面では、ざわつきを整理しきれない感じが若干あります。この辺りは「XF56mmF1.2 R APD」や「XF56mmF1.2 R」を装着したX-Pro2の方が上手かな。
AF速度については、爆速ではないもののストレスは感じないレベル。「XF35mmF1.4 R」を付けたX-Pro2と同じぐらいの感覚で使えました。
これぐらい明るい状況なら、歩きながらの撮影でもスッとピントを合わせてくれます。タッチでフォーカスポイントが動かせるのは、X-Pro2にはない利点だと思いました。今どき普通のことですが。
ただしコントラスト差が少ない場面では、最後まで合焦しないことがあります。
そんな時には「AF+MF」モードと「AF拡大」表示の組み合わせが便利。直感的かつ即座にピントを合わせることができます。
X-Pro2にも搭載されている機能ですが、レスポンスの差なのか、はたまた液晶モニターの見やすさの差なのか、SIGMA fpの方が快適に感じました。
どれも使える!12種類のカラーモード
おもしろかったのが12種類あるカラーモードの変更。どれもが使えそうな素敵な色合い。
同じ露出条件で撮影したものを順番に見ていきましょう。
上の写真は「スタンダード」。これまで掲載の写真は、このモードで撮影しています。
お次は「ビビッド」。彩度を強調した、よくあるモードですね。
こちらは「ニュートラル」。彩度と輝度差が抑えられています。
「ポートレート」は、シャドー部を持ち上げてフラットな印象な仕上がり。
「風景」はシャドーを硬く、彩度を強めに効かせています。
「シネマ」は、一般的なセピアに似ていますが、も少し色情報が残っていますね。
「ティールアンドオレンジ」の”ティール”とは「鴨の羽色」、つまり青緑色のこと。それとオレンジ色を特徴的にしたモードのようで、すんごい素敵なモードです。
「サンセットレッド」にすると、一気に夕暮れ感が出ますね。
「フォレストグリーン」は「風景」よりもシャドーがゆるめ?正直、違いが分かりません。
「FOVクラシックブルー」や、
「FOVクラシックイエロー」のFOVとは、Foveonの意味。SIGMAのこだわりを感じますね。どっちもカッコイイ!
最後は「モノクローム」。
X-Pro2でいうところの「フィルムシミュレーション」。両者を比べると、色の振れ幅が大きいのはSIGMA fpの方ですね。しかも各効果につき強調具合を±5の11段階から設定できるので、表現は無限にひろがります。
ただし、あざとさも少なからず感じるので、調和を保ちつつ使うのは見極めが必要かな。
あとがき
最後に、SIGMA fpとX-Pro2で撮影した写真を。両方ともF値は1.4です。どちらで撮影したものか、分かりますか?
上がX-Pro2、下がSIGMA fpです。こういう被写体だと、正直なところ、センサーサイズによる画質のアドバンテージってほとんど感じないんじゃないでしょうか。
むしろ重量バランスが良い、取り回しに優れたX-Pro2の方が、街角スナップには適しています。SIGMA fpの後にX-Pro2で撮影して、心からそう思いました。動作もキビキビしていて、めちゃんこ軽快です。
うらやましく思ったのは、タッチフォーカスに対応していることと、ストラップ金具がネジ式なこと、そしてFOV系のカラーモードですね。X-Pro3が待ち遠しい!