正式に発表されましたね、X-Pro3。
大きな話題を集めているのは、サブモニター搭載の「Hidden LCD」と、外装部分がチタン素材、デュラテクトといった高強度塗装を施している点。高画素化や高速AFといったカタログスペックに現れない部分に力を注ぐのは、X-Pro系のアイデンティティのひとつです。
で、その辺りは使ってみなくちゃ価値が分からない、というのが真実。発売前の時点で、たとえ望んでいた姿と違うものであったとしても、がっかりするよりかは期待に胸を膨らませておく方が賢明というものです。
というわけで、実機を触れる前に、その他の進化ポイントを整理しておきたいと思います。
X-Pro3(FUJIFILM)|X-Pro2から進化ポイント9選
[1]X-Trans CMOS 4センサー搭載
イメージセンサーが、X-Trans CMOS 4にバージョンアップしました。
それに伴い、有効画素数がX-Pro2の約2430万画素から約2610万画素にアップしています。その差が約180万画素。デジタルカメラの黎明期であれば、L版サイズで十分な画質が担保されると言われた画素数です。それが今や、若干アップ程度の扱いとは。
技術的なところでは、裏面照射型センサーが採用されたのは大きな変更点。高感度に強く、解像度の向上も期待できます。
すでにX-T3やX-T30なんかに搭載済みの実績あるセンサーなので、各所で作例を目にすることができます。それらを見ると、確かにキメの細かい写りをするように感じます。
ですが正直、X-Pro2よりも格段に上というものでもないような印象です。
[2]ISO感度の下限が広がった
感度の下限が、標準でISO160、拡張でISO80になりました。X-Pro2よりも約1/3段、減感できます。
XF35mmF1.4やXF56mmF1.2なんかで、ピーカンの下、ボケを活かそうと開放で撮影すると、露出オーバーになる場面があります。拡張感度はダイナミックレンジが狭まるので、あまり使いたくない。そんなときに恩恵を感じそう。
とはいえ1/3段なので、まだまだ電子シャッターのお世話にはなりそうですが、素直に嬉しい変更点です。

[3]連射コマ数がアップ
連射のコマ数も、約8.0コマ/秒から約11コマ/秒にアップしました。しかも電子シャッターであれば、約30コマ/秒と超高速連射で撮影できます(X-Pro2は電子シャッターでも約8.0コマ/秒)。
僕が連射を使うのは子供の運動会の時ぐらいですが、8.0コマ/秒では少し物足りなく感じていたのでありがたい。約40%アップするので、足りなかったコマを埋めてくれるかもと期待しています。
[4]暗所でのAF性能が進化
X-Pro3の位相差AFは、-6.0EVという真っ暗闇相当の状況下でも作動するようです。超驚き。歴代のXシリーズは、暗所でのAF性能に若干弱みがあっただけに、これが一番うれしい進化かも。
ちなみにX-Pro2は-3.0EVまで。月明かりぐらいの光量があれば作動するレベルです。確かにキャンプの夜なんかを思い返すと、ほのかな灯りに照らされてさえいれば、かろうじて使えてるかな程度です。それでも迷うことの方が多いので、MFの方が早くて確実だったりします。
というわけで、かなり期待しています。
[5]EVFは着実に進化。OVFは現状維持。
X-Pro系の代名詞と言っても過言ではないファインダー。各所に変更点があります。
アイポイント
まずアイポイントが16.8mmに伸びたことは歓迎すべき点。眼鏡が手放せない僕にとって、X-Pro2の16mmでは短過ぎます。常にケラれた状態で見えているため、0.8mmがどれだけの差を生むのか期待です。
EVF
次にEVFが有機ELパネル(OLED)になり、解像度が369万ドット(X-Pro2は236万ドット)、コントラストが1:5000(X-Pro2は1:300)に爆上げされました。
先行するX-T3よりも高輝度なパネルで、見た目のフレームレートも向上しているなど、ずいぶんEVFに開発の力点を置いた印象です。覗いてみるのが楽しみ。
OVF
視野率が約95%(X-Pro2は約92%)に、水平視界が27°(X-Pro2は24.4°)と広がりましたが、マイナーチェンジは否めません。
またERF(OVF内右下の小窓)に撮影画像を表示できるようになったようですが、いかんせんあの面積。どれほど使い勝手が良くなるのか、はなはだ疑問です。
さらにX-Pro2ではファインダー倍率が約0.6倍/0.36倍の可変式でしたが、X-Pro3では約0.52倍の固定式になりました。固定式になったことはまだしも、倍率が低くなったのは大問題です。
X-Pro2のOVFは、革命と言っても良いぐらいの進化を感じただけに、少々寂しく思います。

[6]新フィルムシミュレーション「クラシック・ネガ」
フィルムシミュレーションは2モード増えて、17モードになりました。
ETERNAはさておき、X-Pro3で初めて搭載される「クラシック・ネガ」が素敵です。意外に、キャンプのような自然の色が豊富な場所で使うのが良さそうです。
[7]撮影枚数が増えた
撮影枚数が飛躍的にアップしています。EVF使用時で約370枚(X-Pro2は約250枚)、OVF使用時だと約440枚(X-Pro2は約350枚)に。
なんらかの技術的進化があったのかと思ってしまいますが、X-T3が同じような枚数であることを踏まえると、単純にプロセッサのおかげかと。しかも例のHidden LCDですからね。
X-Pro2と同じバッテリーなので、一日中めいっぱい使っても、電池切れの心配は無いでしょう。
[8]記録メディアは動画撮影に対応
X-Pro3では、SDXCメモリーカードの対応が上限512GBに引き上げられています。
また両スロットがUHS-2に対応し、ビデオスピードクラスV30に対応するなど、動画撮影を意識したスペックになっています。
ですがX-Pro2含め、このシリーズのカメラで動画を撮影することは皆無なため、このスペックアップには魅力は感じません。とりあえず、昨今の時流に取り残されない程度にはしておこうか的なものでしょう。
[9]フォーカスブラケティング
フォーカスブラケティングとは、後からピント位置を変えられる機能。XF60mm F2.4 R Macroを使った物撮りなんかで重宝しそう。無くてもいいけど、あるに越したことはないですかね。

[番外]D-Pad(十字キー)が無い
X-Pro3では背面のD-Pad、いわゆる十字キーがなくなりました。フォーカスレバーは健在なので、ハード的操作はそちらで行なえ、ということですかね。
この流れはX-E3から始まりました。タッチ操作が可能となり、物理的ボタンよりも、シンプル&ミニマムなインターフェースを目指しているようです。
けれども、これってFnボタンの数が減ることになってやしませんか?
SIGMA fpを触って思ったのですが、やはり頻繁に変更する機能は、物理ボタンで一発呼び起こせる方が便利です。

まだ説明書を読めていないので[番外]にしましたが、気になるところです。
あとがき
というわけで、これらのポイントを踏まえてX-Pro2から買い替え、あるいは買い増しを検討することになります。
けれども、なんというか、現状維持感が強い。X-Pro1からX-Pro2にモデルチェンジしたときの、ドラスティックなワクワク感はありません。
ブラッシュアップと言えば聞こえが良いですが、たんに身なりを整えただけにしか思えないんですよね。荒削りでも良いから、X-Proシリーズには新しいアイデアに満ち溢れたカメラを期待していたもので。
背面液晶を内側に隠して「新しい写真の喜びを提案します」とか言われてもなぁ。「ビューファインダー+アイセンサー」モードを愛用している者にとっては、新しさは希薄です。手ブレ補正機能だけでもあれば、ワクワクしたかもしれないのに。
おっと、愚痴が溢れ出てきてしまいました。いかん、いかん。実機を触ってからにしますね。意見が変わるかもしれないので。