琵琶湖の東側、近江八幡市にあるスイーツショップ「ラ コリーナ近江八幡」に行ってきました。
バームクーヘンで有名なクラブハリエを運営する「たねやグループ」の旗艦店だそうで、洋菓子から和菓子、ベーカリーの販売、カフェが併設など、甘いものを堪能するにはうってつけのお店です。
他のグループ店にはない、”ここだけ商品”を食べてまいりましたので、以下レポートしたいと思います。
「ラ コリーナ近江八幡」は、和・洋菓子、カフェ、ベーカリーあり。まるでテーマパークのよう。
先にも書きましたが、「ラ コリーナ近江八幡」は、たねやグループが運営するスイーツショップです。
スイーツショップといっても、35,000坪を超える広大な敷地(甲子園球場 約3個分)に建てられた、これまたメインショップだけでも400坪を超える建物なので、ちょっとしたテーマパークのようなもの。ぐるっと回るだけでも、1、2時間はあっという間に過ぎてしまいます。
店外をぐるりとひと回り
メインショップ〜カステラショップ
まん中の三角屋根の建物が、「メインショップ」。クラブハリエやたねや(和菓子)、カフェなどが入っています。
左の建物は、カステラ専門のお店。その名もずばり、「カステラショップ」。建物の意匠に一貫性があるといいますか、なじみすぎているので、ちょっと分かりにくいかもしれません。
本社〜回廊〜コンテナショップ
カステラショップのさらに左には、たねやグループの「本社」があります。一般のお客さんは入ることができないので残念ですが、とても個性的な建物で一見の価値ありです。
一方、メインショップの右手には、ベーカリーやギフトショップなどが集まる「コンテナショップ」へと続く回廊があります。
回廊の屋根は、漆喰と木片でストライプ模様になっています。幾層に重なるバームクーヘンがモチーフなのでしょうか、あるいはクリームをサンドしたどら焼きなのか。いずれにしても美味しそう、いえいえ、楽しい気分が盛り上がってきます。
「コンテナショップ」はこんな様子。コの字形にお店が並んでいます。詳しくは次で。
店内へ
メインショップ
メインショップの店内は、まん中のたまりスペースをはさんで、洋菓子エリアと和菓子エリアに分かれています。
洋菓子エリアは、もちろん「クラブハリエ」。カウンターの後ろには、できたてのバームクーヘンが何本もかけられています。
すぐ横に大きなオーブンがあり、バームクーヘンを作る過程を、間近に見ることができます。
焼き上がりまで、専用の器具を使って、何度か直径を測ります。
こちらは切り分けているところ。ナイフを当て、軸を回転させながらカットします。スーッと切れ目が入ったかと思うと、もう切れてしまっているので、見ていてとても気持ちが良い。釘付けになってしまいました。
和菓子エリアでは、「たねや」の商品を購入することができます。
エリア中央の一角に、どら焼きの製造販売コーナーがあります。ラ コリーナ近江八幡でしか買うことのできない限定品です。持ち帰り用でもなく、基本的には、その場でいただくことになります。
期間限定の「生どら いちご」はこうして作られます。
これだけ写真解説を載せといてアレですが、僕が選んだのは普通の「生どら」。まずは、スタンダードなお味を試しておきたかったので。
ふんわり生地に、さらに上をいく超ふんわり生クリーム。しっかり味のあんこと合わさって、美味しかったです。でもまぁ、感動するレベルではありませんでした。ちょっと期待を高く持ちすぎましたかね。
感動といえば、壁一面に飾られた「和菓子の木型」には驚きました。この写真の3倍ぐらい数の木型が、ビシっと美しく掲げられています。
繊細なものからダイナミックなものまで、実に様々な表情のものがあり、あらためて和菓子の世界の奥深さを感じました。
2階は「カフェスペース」。ほんのりあたたかい焼きたてのバームクーヘンは、こちらで食べることができます。
天井と一部の壁に見える黒い点々は「木炭」。スタッフの皆さんで、すべての貼付け作業を行ったそうです。
見た目の演出以上に、消音効果が狙ってとのこと。何も貼らなければ、音が反響してしまい、落ち着きの悪い空間になってしまうのです。炭と漆喰なので、ひょっとしたら消臭効果も狙ったのかもしれません。
カステラショップ
次に、カステラショップの店内に。入ってすぐ正面に「栗百本」の切文字が掲げられています。この建物は、百本以上の栗の木を使って建てられているのだそうです。なんとも贅沢!
カステラばかりがずらりと並ぶカウンター。
お祝いの品用に、幅50cmはある「大判カステラ」も展示されていました。
カステラショップにも、工房が併設されています。職人さんがつくる様子を、じっくり拝見。
切り分けのための目印として、ガイドを当てます。
大判から半分へ、そして一本サイズ、一切れサイズへと切り分けていきます。ふわんふわん揺れるカステラを、薄くしなる包丁で、慎重に正確に。
この一本もののカステラは家族のお土産に購入し、僕は店舗限定の「焼きたて八幡(はちまん)カステラ」を食べました。
焼きたてならではのふわふわの生地と、ザラメの食感、そして甘さがベリーグッド。普通に美味しい。でもね、やっぱり感動するようなレベルではありません。記憶にガツンとくるような、強烈な何かがないのです。どら焼きやカステラに、それを求めるのは酷なのかもしれませんが。
コンテナショップ
コンテナショップには、ベーカリーやギフトショップの他に、ホットドッグやライスコロッケ、みたらしだんごなどのテイクアウトものを販売するお店が集まっています。フードコート的な感じですね。
アルコールはありませんが、淹れたてコーヒーをいただくことは可能です。ちなみにドリッパーはカリタのものを使っておられる様子。ふむふむ。
藤森建築を体感できる!
かねてより、ここを訪れたいと思っていた一番の理由は、藤森照信先生が設計をされた建物を見たかったからです。
藤森先生の作品は、ユニークでいて温かみがあり、写真を見るだけでも楽しい気持ちにさせてくれるものばかり。手触り感が強いこともあって、よく「ジブリ作品に出てきそう」とか、「おとぎ話の世界に入ったみたい」などと言われています。
メインショップを、駐車場側から撮影しました。屋根の形状が、背後に見える八幡山の稜線と相似になっています。建物が風景に溶け込んでいます。
ゆるやかな曲線状の小径をたどると、店舗へと誘導されます。
大きく張り出した屋根を支える柱は、森から切り出したままの姿をしています。ひとつとして真っ直ぐに整形されたものはありません。
軒下には、これまた藤森先生が設計されたベンチがあり、ここに座って、買ってきたものをいただくことができます。ベンチも曲線で、やわらかなリズムを生み出していますね。
「草屋根」と呼ばれる大きな屋根は、一面に芝生が貼られ、軒先にはロール状の芝生のシートが取付けられているそうです。厚みは20cm近くあるでしょうか。前日に降った雨をふんだんに吸い込んでいるようで、1日経過しても、ポタポタと雫がしたたり落ちていました。
普通の住宅なら、いつまでも雫が垂れ落ちるのは歓迎できることではありません。けれども藤森建築では、風情や趣きとして感じ入ってしまいます。
店舗入口への動線上には、雨樋がつけられているので、雫がかかることはありません。
壁は土で塗り固められています。この壁もスタッフの皆さんで塗られたそうです。お菓子作りの職人さんたちは、本業と通じるものがあるのかもしれません。探せば、社長の手形が見つかりますよ。
どこかから種が飛んできたのか、ところどころに種類の異なる草が生えていました。これから季節が進めば、屋根全体が緑に覆われ、こうした草も目立たなくなっていくのでしょうね。
店内に差し込む光は、土壁によってほどよく分散され、とてもやわらかな印象。
置かれている備品や設備のひとつひとつも、ぬかりなく素敵。これはゴミ箱です。
こちらもゴミ箱。
窓のカギ(?)だって。ガラスも手製なのかな?いちいち味わいがあります。
駐車位置の目印となる看板も、写真のように、昆虫が描かれています。アリ、クモ、ハチ、テントウムシ、トンボ、セミ、チョウ、カマキリ、そしてカブトムシ。子どもは大喜びです。
写真の水辺は、「田んぼ」。施設のど真ん中にあります。撮影は4月上旬だったので、まだ何も植えられていませんが、時期がくると苗植えがはじまり、収穫まで行うそうです。
回廊の屋根沿いに美しく咲くサクラの木が見えます。
あくまでも「自然と共に」という藤森建築の本質を感じることができました。
あとがき
スイーツよりも、建築への感動が大きかったわけですが、それは学生時代に建築を学んだから。あの頃、この建物と出会っていれば、また少し違った価値観を持っていたでしょうね。
建築学科の学生さんはもちろん、これから新居を建てようとお考えの方なんかも、一度、藤森建築は体験しておくことをおすすめします。
「生どら」や「八幡カステラ」など、店舗限定品を目当てに訪れるよりも、藤森建築が生み出す敷地全体の雰囲気を味わいに行くことをメインにする方が、得るものは大きい気がします。
車で20分ほどの場所に、「休暇村 近江八幡」という宿泊施設があります。ホテルはもちろん、キャンプ場やプール、温泉施設なんかも併設されています。ここを拠点として、近江八幡を楽しむ。そのひとつに、ラ コリーナを組み込むというのも良いんじゃないでしょうか。