2018年のCP+の富士フイルムブースは、X-H1(FUJIFILM)が大プッシュされていたようで。
「Xシリーズにボディ内手ブレ補正を組み込むのは難しいって言ってたじゃないかよ!」、「X-Pro2とX-T2のダブルフラッグシップってどうなるんだよ!」というような愚痴の数々を口ずさみながら、日々ネットにアップされるX-H1の情報を楽しみにしています。
けれども、X70の後継機を期待していた僕にとっては、X-H1の話題はあちら側のもの。次の新製品の発表(おそらく秋)まで、現有戦力で戦うことが決定になりました。
であれば、手持ちの機材のポテンシャルは余すことなく引き出すのが、賢明な考え方。指をくわえて待っていても仕方ないですしね。
というわけで、ここしばらくの間、意図的にX30(FUJIFILM)で撮影してみました。すると「やっぱり良いカメラだなぁ」と、改めて感心させられた次第です。
スーパーマクロモード(1cmマクロ)と超解像ズーム
X30に搭載されているセンサーは「2/3型」。X-Pro2に搭載されている「APS-C」に比べて、15.6%ほどの面積しかない小さなセンサーです。昨今の高級コンデジと呼ばれるカメラに搭載されている「1型」と比べても、半分の面積しかありません。
APS-Cセンサーになる前のGR(RICOH)に搭載されているセンサーは「1.7型」。「2/3型」は、それよりも10%ほど大きいだけなので、今となっては小さい部類に入ります。
センサーサイズが小さいと、一般的には画質の面で不利に働くと言われています。高感度ノイズや階調性能、ボケの生成量、といったあたりで大きなセンサー に見劣りしてしまうんですね。「立体感」を追求するなら、大型センサーを積んだカメラを選ぶのが正解です。
1cmまで寄れる「スーパーマクロモード」
とはいえ、小さなセンサーにだって優位点はあります。代表的なのが「寄れる」こと。
なぜセンサーが小さいと寄れるのか?についての詳細は、上手く説明することができないので省きます。とにかく「被写体に寄る」ことに関しては、小さいセンサーの方が有利に働きます。
なかでもX30のマクロ機能は優秀で、レンズの先端から被写体まで1cmの近接撮影が可能(「スーパーマクロモード」使用)。僕のX30にはレンズフードを付けていますが、フードが被写体に接触するまで近づけても合焦します。
スーパーマクロモードを使って、実際に撮影したものがこの写真。今年の年賀状を撮影したのですが、噂のマイクロ文字が読み取れます。
マイクロ文字部分を等倍に拡大。左から4本目の縦線が「あけまして」、右から2本目の縦線が「おめでとうございます」と書かれていますね。
「超解像ズーム」との合わせ技が顕微鏡レベル!
分かりやすくするために拡大をしてみましたが、「超解像ズーム」を合わせて使うことで、同等程度の写真を撮影することができます。それがこの写真。
等倍には及びませんが、拡大しなくても、何が書いてあるのか読み取れるぐらいの大きさには撮影できています。
ちなみに等倍拡大してみると、こんな感じ。印字の”滲み”や”かすれ”まで、見て取れます。十分過ぎるほどの解像力です。
「超解像ズーム」は、要するにデジタルズームのこと。一昔前のデジタルズームといえば、画質の劣化がひどく、とてもじゃないけど使えたものではありませんでした。ですが、この品質なら、積極的に活用できます。
1cmマクロ撮影ができる現行機種
1cmマクロ撮影ができる現行機種といえば、TG-5(OLYMPUS)やWG-50(RICOH)、IXY650(CANON)あたり。
ですが、いずれも搭載されているセンサーのサイズは「1/2.3型」。X30の「2/3型」の約半分ということで、接写は出来ても画質の低下が気になるところです。
TG-5やWG-50の「顕微鏡モード」はうらやましいですが、日常使いではX30の倍率でも十分に楽しめます。
コンデジ史上最高品質のEVF
X-Pro2よりも見やすい?EVF
X30のEVFは、今でも十分過ぎるほどのクオリティです。X-Pro2など、Xシリーズ現行機種との比較表がこちら。
X30 | X-Pro2 | X-T2 | X-E3 | X-T20 | X-H1 | |
使用パネル | 0.39型 有機EL |
0.48型 TFTカラー液晶 |
0.5型 有機EL |
0.39型 有機EL |
0.5型 有機EL |
|
パネル画素数 | 約236万画素 | 約369万画素 | ||||
倍率 | 0.65倍 | 0.59倍 | 0.77倍 | 0.62倍 | 0.75倍 | |
水平視野 | 25° | 24.4° | 31° | 25° | 30° | |
アイポイント | 17.5mm | 16mm | 23mm | 17.5mm | 23mm | |
表示ラグ | 0.005秒 | 0.12秒 | 0.005秒 |
さすがにX-H1やX-T2には劣りますが、X-E3やX-T20とは同等よりも少し上。X-Pro2との比較では、X30がほとんどの項目で勝っています。どうりで見やすいわけです。
カメラを振り回しても、EVF内の映像に遅れやカクつきは発生しませんし、色味が自然で、デジタルっぽさによる疲れは、ずいぶんと軽減されています。
特に、X-Pro2よりもアイポイントが伸びたことは、メガネ必須の僕にとってはメリット大です。X-Pro2のEVFは四隅が見えにくく、覗く眼の位置をズラすなどして対応していました。それがX30なら、眼を動かすことなく、なんとか端まで見渡すことが可能です。わずか1.5mmの差ですが、見え方の差は大きいです。
他メーカー比較でもトップレベル
ちなみに他メーカーの機種とも比べてみました。
X30 | RX100M5 | TX2 | G1X M3 | PEN-F | GX7 MK3 | |
使用パネル | 0.39型 有機EL |
0.39型 有機EL |
0.21型 カラー液晶 |
不明 | 有機EL | カラー液晶 |
パネル画素数 | 約236万 画素 |
約236万 画素 |
約233万 画素 |
約236万 画素 |
約236万 画素 |
約276万 画素 |
倍率 | 0.65倍 | 0.59倍 | 0.53倍 | 不明 | 0.62倍 | 0.7倍 |
水平視野 | 25° | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
アイポイント | 17.5mm | 20mm | 17.5mm | 22mm | 20mm | 17.5mm |
表示ラグ | 0.005秒 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
最新のGX7 MK3(Panasonic)のスペックが際立っていますが、X30のファインダーが高水準であることが分かります。色味など、数値で表せないものを含めると、まだまだトップレベルです。
しっかし、G1 X Mark III(Canon)の不明項目の多さにはがっかりです。見え具合の指標になる「ファインダー倍率」ぐらいは、最低限アナウンスすべきだと思うんですがね。
テレ端(望遠)でも高画質
X30を使うまでは、コンデジのテレ端側の描写には期待しない、というのが僕の中の常識でした。
- 解像力低下
- コントラスト低下(全体的に薄くなる)
- ブレる
デジタルズームは論外。たとえ光学ズームの範囲であっても、ワイド端からズーム全域で画質が保たれているカメラに出会ったことがありませんでした。
そんな常識に反して、X30のテレ端は良く写ります。ワイド端と比べても、解像力やコントラストの低下は一切見られません。ボケ味も綺麗で、むしろテレ端の方が良いんじゃない?と思えるぐらい高レベルな描写です。
これはズーム全域に言えることなので、レンズの設計が相当良いんでしょうね。あと手ブレ補正が安定していることも大きなポイントです。
あとがき
他にも、秒間12コマの連写ができる点(X-Pro2は秒間8コマ)、約470枚の撮影ができる点(X-Pro2は約340枚)など、サブ機の枠を超えた「すごい!」をいくつも持っていて、かなり良い感じなカメラであると再認識しています。
X70の後継機がどうなるか分かりませんが(そもそも発売されるのか?)、X30は手元に残しておく確率が非常に高い。
かなり愛着が湧いてきたので、リングストラップを付けたり、各種設定を見直したりしています。
すでに生産は終了しているので、入手手段は流通在庫か中古しかありません。マップカメラでも、最近はずいぶん数が減ってきました。壊れたらどうしよう。。。是非とも、後継機の開発は行って欲しいものです。