富士フィルムサービスステーションからの帰り道、そういやパナソニックからTX1が発表されていたな、ということでグランフロント大阪へ。
TX1のスゴイとこ
4Kフォト
最近よく耳にするようになった「4K」ですが、動画にはあまり興味ないんで、とスルーしていたらデジタルカメラににも搭載されるようになって、遅ればせながらの衝撃を受けました。
メーカーによると、
「4K PHOTO」は秒間30コマ連写の連続した撮影が実現する、決定的瞬間をとらえるための新しい撮影スタイル。A3相当のサイズまで引き伸ばせる高解像度で、跳ねる水、羽ばたく蝶、子供の自然な表情など、これまでの写真ではとらえきれなかった躍動感あふれる瞬間を作品にすることができます。(パナソニック公式HPより)
とあります。
約800万画素相当の静止画を1秒間に30枚撮り続け、そのうちのベストショットを抜き出してくる、という撮影方法。簡単に言えば、「数打ちゃ当たる」ってやつですね。良い意味ですよ。
この方法なら、例えば「野球でバッターが球を捉えた瞬間」なんかも軽々と写真に残すことができるわけです。
フォーカスセレクト
さらにこの4K技術を利用した「フォーカスセレクト」という機能が搭載されています。
画面をマルチAFと同じ49エリアに分けて、高速AF(空間認識AF)で被写体のフォーカスポイントを瞬時に算出。4Kフォト機能を利用して、近(Near)から遠(Far)へフォーカスポイントを変えながら連続撮影することで撮影後にピント合わせができ、好きなフォーカスポイントの写真を自由に選べます。また、ピンボケによる失敗写真を減らすこともできます。(パナソニック公式HPより)
撮影後、ピントの位置を自由に選択・変更できるという、まるで”ドラえもんの道具”のような機能です。パナソニックのHPでは、この機能で遊べるようになっているので、未体験の方は是非!おもしろいですよ。
大人数が参加するイベントで撮ったスナップ写真に、複数の人間が写っている場合、各人にピントを合わせた写真をプレゼントする、なんてことが可能になります。
ちなみにこの場合でも画素数は約800万画素なので、L判サイズぐらいなら、美しくプリンとできます。
時間と空間が思いのままに
この2つの機能を使えば、撮影者は構図と露出だけ気を遣っていればいい。
先ほど「ドラえもんの道具のような」と書きましたが、20世紀、まだフィルムカメラの時代からすれば、まさに未来の道具だと言えます。
スピードやタイミングといった時間的要素が、作品の質に強く影響する場合は4Kフォト、奥行きや位置といった空間的要素が複雑に絡む場面ではフォーカスセレクトが有効となります。
時間も空間も根こそぎすくい取る、そんな撮影方法に時代は進んでいるのですね。
※メーカーに確認したところ、両方の機能は同時には使えないそうです。4Kフォトで切り出した1枚に対して、フォーカスセレクトで後からピントを変更することはできない。でもいつかはできるようになっていくのでしょうね。
TX1のダメなとこ
EVFの倍率が小さく、せいぜい構図確認用
これを触る前に、X-Pro2のファインダーに酔いしれてきたものだから、余計に見にくく感じました。
これだけのコンパクトなボディに収めているのだから、けなすよりも評価したいところなんですが、お世辞を言っても仕方がないので、ここでは率直な感想を。
以前に発売されたLF1よりはマシですが(あれは酷かった)、TX1のEVFも、まぁ構図確認用レベルですね。
このファインダーを覗き続けて目が疲れるぐらいなら、背面液晶(こちらはとても綺麗)を使って、4Kフォトで気楽に撮影した方が合理的だと思います。
望遠端がF5.9と少々暗め
搭載されているレンズはLEICA DC VARIO-ELMARIT。35mm判換算で25-250mmと、非常に高倍率に設計されています。
その代償に、広角端こそF2.8ですが、望遠端はF5.9と少々暗め。これでは室内、例えば子供のお遊戯会をホールの最後列からアップで狙うには、光量不足で画質の乱れが気になるのではないかと思います。
同じ1インチセンサーを搭載しているRX100の望遠端(100mm)が、これよりも明るいF4.9なのですが、室内では光量不足を感じる場面が多く、ISO感度が上がってしまうので、あまりズームは使いません。
高感度耐性が大幅にアップしていれば良いのですが、そうでなければ開放F値がF5.9である望遠端に、低照度下での画質は期待できないかな。その時は、28mm専用機と割り切って使うのが良いでしょうね。
今後、アップされるであろうサンプル画像を楽しみにしておきます。
あとがき
後発モデルはこうでなくちゃね!
TX1のライバル機は、先ほども少し書きましたが、RX100M4でしょう。
1インチセンサー搭載機は、各社からいくつか発売されていますが、
- 手のひらサイズのコンパクトなボディ
- 凝縮して詰め込まれた機能(4K、ファインダーなど)
という点で、両機は同ポジションにいると考えられます。
TX1は、4Kフォトやフォーカスアシストなどの最新テクノロジーを引っさげ、後発であるがゆえに、非常に挑戦的な仕様になっていて感心します。フォロワーはこうじゃなくっちゃね。X70もGRに対して闘争心をむき出しにかかっていって欲しかったなぁ。
「趣味は写真です」とはちょっと違うかな
4Kフォトやフォーカスアシストなど、技術の進化には単純に驚きを覚えますが、これまでの「写真を撮る」という文化からは異質な世界に入り込んでいる気がして、少々残念な感じがします。
「写真を撮る」という行為は、被写体との間に生まれる”一瞬”が舞台です。
その”一瞬”に対して、撮影者がベストを尽くせるようにサポートする、というのが、これまでの技術の役割だったように思います。
4Kフォトやフォーカスアシストといった技術は、撮影後に役割を果たすものです。悪く言えば、”一瞬”をないがしろにする危うさがある。
僕は、前者のような技術の進化は賛成だが、後者に対してはあまり興味が湧きません。「趣味は写真です」と思えないようになる気がするんですよね。