一説によると、扱いやすいレンズの画角(焦点距離)は使用者の年齢に近い、のだそうです。
振り返ってみると、なるほどとうなずけることが多い。
20代は28mm、30代は35mm
20代前半から後半にかけて、「GR1s(画角28mm)」と「HEXAR clasic(画角35mm)」を、気分や状況、目的に応じて使い分けていました。
その時は5:5ぐらいの割合だったかなぁ。すこぶるHEXARがお気に入りのカメラだったこともあり、えこひいきはあったのかもしれませんが。
けれども、GRがデジタル版としてリニューアルされ、NIKON F80を下取りに出して使い始めてからは、ほぼ100%の撮影をGR digital(画角28mm)で行っていました。これが20代後半から30代前半まで。
その後、数台のカメラ&レンズを所有したのち、現在(40才手前)は「X-Pro1」に落ち着いています。よく使うレンズは「XF23mm F2」と「XF35mm F1.4」です。
両レンズともAPS-C用のレンズなので、一般的なものさしである35mm判に換算すると、それぞれの画角は35mmと53mmということになります。10年前とくらべて、確かに望遠側に好みが移っているようです。
これはどういうことなのか?
原因1:視野角が狭くなる
成人の両眼の水平視野は180度ですが、年齢を重ねるに従って狭くなっていきます。高齢者の場合は約100度くらいと言われています。(HONDA公式HPより引用)
最近、にぎわいをみせている自動運転自動車。加齢による身体能力の低下が事故の原因であることが多いみたいなので、早い実現が望まれます。
年齢を重ねると、どうしても体の機能は衰えていきます。引用文にあるように、40年の歳月は水平視野でいうと80度の差を生むようです。つまり、見える範囲が半分近くまで狭くなってしまう。
これが好みの画角に影響しているのではないか、というのが1つ目のポイントです。
見ている(見えている)範囲が狭くなっていくのだから、写真に収めようとする範囲も同じように狭くなっていくのは自然なこと。
見たままを瞬時に切り取るスナップ写真では、「視野=画角」という場面が多いので、特に影響が出るのではないでしょうか。
原因2:思考時間が長くなる
物事に対峙する時間が長くなる、と言いましょうか、年をとるにつれ、じっと見つめる、じっと考えるようになってきている気がします。
若いときは、あれもこれもと目移りしてしまうし、あきっぽい性格も手伝って、集中力がなく、思慮の浅い行動ばかりとっていました。
それがこの頃は、必要なものとそうでないものを分けて考えられるようになりました。1つのモノやコトに対して、いろいろな視点で考えてみようという気構えに変化しつつあります。
画角と絡めて整理すると、
- 物事に関わる時間が長くなる→じっと見つめる・考える→画角の望遠化
- 関わる物事が整理され、限定される→背景の整理・被写体を浮かび上がらせる→画角の望遠化
考え方や物事の捉え方の長時間化が、画角を狭く、望遠寄りにしているように思います。
原因3:最短撮影距離と子供の成長
普通、画角が狭く=長焦点になると、最短撮影距離は長く、画角が広く=短焦点になれば、最短撮影距離は短くなります。
最短撮影距離は以下の引用を参照してください。
レンズには、被写体までの最短で撮影できる距離が決まっています。その距離のことを最短撮影距離といい、それよりも被写体に近づいてしまうとピントが合わなくなります。(ソニー公式HPより引用)
僕が使っているレンズの最短撮影距離は、
- XF23mm→60cm
- XF35mm→80cm
となっています。
たとえばテーブルの上の料理を撮影しようとするとき、
- イスに座っまま、フレーミングできるのがXF23mm
- 少し引く、もしくは立ってじゃないとフレーミングできないのがXF35mm
言い換えれば、
- 寄れるレンズがXF23mm
- さほど寄れないレンズがXF35mm
ということになります。
レンズを選ぶときには、どれぐらい被写体に近づくことができるのか、というのは大事なポイントです。
子供撮影には、最短撮影距離が短いレンズがおススメ
特に、子供の写真を撮る方には、最短撮影距離が短いレンズ、寄れるレンズを購入することをおススメします。
子供はいつも危険と隣り合わせ
子供は小さい頃ほど、何をしでかすか分かりません。
とにかく好奇心旺盛で、あっちゃこっちゃ動き回り、目の前のものをいじくったり口に入れたり。親の予想をはるかに超えた奇想天外な行動をするものです。
だから必然的に、危険を回避するためにも、子供との距離は近くなってしまいます。
幼児期までは、手の届く距離に
そんな状況で子供を撮影する場合、最短撮影距離が1mを超えるような寄れないレンズでは、フレームに収めることが難しく、なおかつ突然訪れる危険から子供を守ることもできません。
また親との距離が生まれると、子供も不安になるので、良い表情をしてくれなくなってしまいます。
成長とともに、必要な最短撮影距離は長くなっていく
成長とともに、子供は親の手から離れていきます。
少しづつ、自分のことは自分でするようになり、自らの判断で危険を回避するようになっていきます。また体も大きくなるので、少し距離を離さないと、逆にフレームに収めにくくなってしまいます。
子供の成長とともに、必要となる最短撮影距離は長くなっていきます。
子供の成長が親の年齢=画角と符合する
当たり前の話ですが、同じだけ親も年をとっていきます。
はじめての子供が20代後半でさずかったなら、その子が小学生にあがるころには、親は30代中盤から後半になっている。
これを画角の変化にからめてなぞってみると、
- 幼児期=親は20代=必要な最短撮影距離は短い=画角28mmぐらい
- 小学生=親は30代=必要な最短撮影距離が少しのびる=画角35mmぐらい
のように符合する。例にでてくる親の年齢設定は、我が家をモデルにしています。
話が長くなってしまいましたが、子供の成長段階とその時の親の年齢が画角に符合する、ということが、ここでの主張です。
まとめ
以上、3つの視点で年齢画角論を検証してみました。
自分の経験や感覚と照らしあわせて、大きく外している感じはしないんですが、みなさんはどうでしょう。
自然風景や飛行機などの写真をメインとされている方は、被写体が限定されているので、あまり当てはまらないのかもしれません。これはスナップ写真についての理論なのかな、という気がします。
X-Pro1を使いはじめた最初のレンズはXF35mmでした。35mm判換算で53mmの標準レンズです。その時、僕の年齢は35歳で子供が5歳のときでした。
次に購入したレンズがXF23mm(35mm判換算35mm)だったのも、今となっては自然な流れだったように思います。