これまで当ブログでレビューしてきたXFレンズは、どちらかといえば標準〜中望遠レンズのものばかりでした(換算35mmを標準とするかは議論の対象ではありますが)。
今回は珍しく広角。換算27mmのフジノンレンズ「XF18mm F2 R(以下XF18mmF2)」です。
正直なところ、35mmよりも広い画角は得意な方ではありません。情報が入りすぎて散漫な画になりやすく、あとから見ると「何を撮ったんだっけ?」となることが多いからです。
個人的にチャレンジ要素の強いレビューですが、お付き合いいただければ幸いです。
XF18mm F2 Rmの使用感
XF18mmF2をX-Pro2に装着して感じる親密感。原因を考えると、すぐに分かりました。X-Pro1時代からの相棒「XF35mm F1.4 R(以下XF35mmF1.4)」と様相が似ているからです。
XF35mmF1.4と似ている部分
レンズ鏡筒の最大径
レンズ鏡筒の太さの違いは、左手を添えたときに違和感を覚えるかどうかを決定する要素のひとつ。
XF18mmF2の最大径はΦ64.5mmで、XF35mmF1.4はΦ65.0mm。数値的には全く同じではありませんが、手に伝わるボリューム感は同一といっても差し支えありません。慣れ親しんだXF35mmF1.4と同じ感覚で構えることができます。
フォーカスリングのトルク感
フォーカスリングのしっとりとしたトルク感は、XF18mmF2やXF35mmF1.4のみならず、XFレンズ共通の仕様。
なので特別に書き記すことではないわけですが、 レンズ鏡筒の太さのことを合わせると、ますます同じ操作感だと主張したくなります。
例えば、レンズ鏡筒が先細りしている「XF23mmF2」なんかだと、
トルク感が同じであっても、全く別のレンズだと認識します。
極端な言い方ですが、「つかむ」と「つまむ」の差が効いてくる。ひいては撮影への構えに違いが生まれます。
良い悪いの話ではなく、あくまでも感覚が同じかどうか、というだけの話ですが。
AF時の挙動
XF18mmF2のAF機構は、画質優先の「全群繰り出し式」。フォーカス時にレンズ全体が前後に動くため、「ジャジャッ、コッ!」など、威勢のいい作動音が鳴り響くのはXF35mmF1.4と同じ仕様です。
否定的な意見が多いこの挙動も、古いXユーザーには胎内音のようなもの。「良い画を描くために頑張ってるんだなぁ」なんて、愛らしささえ覚えます。
世論を反映してなのか、全群繰り出し式を採用したレンズは、この2本だけ。画質にゴリゴリのこだわりを持って造られた「XF56mmF1.2 R APD」ですら、インナーフォーカス式です。
ファームウェアのバージョンアップでAF速度も向上されたわけですし、また全群繰り出し式のレンズが出る可能性も、、、無いですよねぇ。
ちなみにAF速度もXF35mmF1.4と同等です。
レンズフードの形状
XF18mmF2のレンズフードは、世にも珍しい先がすぼまった「角型フード」。もちろんXF35mmF1.4と同じ形状です。
これに関しても賛否両論あるようですが、僕は完全に肯定派です。
支持する理由の90%以上は「カッコいい」という主観的なものですが、「ひっかかりが少なくて鞄から出し入れしやすい」といった機能的なメリットも、無意識下では作用しているはずです。
XF23mmF1.4に付属している先開きのデカい花形フードは、仮にもパンケーキレンズたるXF18mmF2には不似合いだと思うのですが、どうでしょう。
XF35mmF1.4と違う部分
一方、XF35mmF1.4とは違うな、と感じる部分もあります。
軽い
XF18mmF2の重さは公称116g。186gのXF35mmF1.4に比べて、約40%も軽量です(レンズフード込みなのかは分かりません)。
軽いことに加えて全長が短いおかげで、カメラ含めての軽快さは、明らかにXF18mmF2の方が上。これまで重さに対してネガティブな認識を持たなかったXF35mmF1.4も、XF18mmF2で撮影した後ではヘビーに感じてしまいます。
絞りリングは硬め
わずかな差ですが、絞りリングはXF18mmF2の方が硬めのセッティング。XF35mmF1.2は、不意に絞りが変わってしまう軽さなので、こちらの方が好みです。
具体的には、トルクが強く、クリック感がより明確になった感じ。ギア同士の噛み合う姿が想像できるような、操作して楽しい仕上がりになっています。
XF18mmF2の画質
優しい描写
いきなり総評的な感想になりますが、とっても”優しい”描写をするレンズという印象を受けました。
現代レンズにありがちな、カリカリにシャープな描写ではなく、ピント面を適度に解像して、あとはその場の空気を大切にする感じ。
写真(↑)は開放から半段ほど絞って撮影したものですが、ピントを合わせた暖簾は質感を感じられる程度に解像し、アウトフォーカス部分は少し控えめに結像しています。おかげで見せたい部分が自然な感じで浮かび上がってきます。
階調表現が秀逸
ひとつに階調表現のレベルの高さによる部分が大きいかと。明暗差が激しく入り交じる場面でも、ハイライト、シャドウともに粘り、画面全体を通して安定したトーンで描きます。
写真(↑)で言えば、最も明るいアーケードの屋根から、最も暗い天狗の影まで、滑らかに光を捉えきっています。
どこを見ても色情報が存在する破綻の無い画というのは、安心感を覚えます。
ボケ方が自然
さらにボケ方が自然なことも、優しい描写をする要因のひとつ。あくまでも主題はピントを合わせた部分。クセがあると、ボケの方に目がいき、画面がちらかって見えてしまいます。
このレンズの開放絞りはF2と明るめで、最短18cmと結構寄れるので、換算27mmの広角レンズですが、背景はそこそこボケてくれます。
ピント面からゆっくりと輪郭が溶けていき、それが何であるかを判別できる程度でストップする。状況や物語を描くには、これぐらいの背景がちょうど良い感じに思います。
前ボケ、後ボケともに自然。
こんなにも穏やかな描写だと、普段の日常に気負わず向き合えるので、自然と出番が増えそうな予感がします。
XF18mmF2の雑感
X-Pro2のOVFとの相性が良い
今回、使用したカメラはX-Pro2。「街角スナップならOVFでしょ」ということで撮影を開始したところ、これが大ハマリ!換算27mmの視野の広さと、素通しファインダーから見えるクリアな世界との融合は、気持ちをどこまでも自由に、のびやかにしてくれます。
OVFではAF云々気になることもありますが、被写界深度が浅いという広角レンズのメリットを活かせば問題無し。被写体から少し離れて1段ほど絞れば、サクサク撮影は進みます。いっそのことピントを固定してしまうのもアリですね。
換算27mmは物語を写し留める
これまで苦手意識のあった換算27mmという画角ですが、改めて向き合ってみると、なかなかおもしろい。
噂通り、街での撮影に最適な画角のようで。人間、建物、雑貨、オブジェなどなど、あらゆるものが混在する状況をありのままに受け止めて、ここぞという瞬間にシャッターを押す。すると紙芝居の一枚のように、物語の一場面を写し留めることができます。
気楽に、味わい深く
気持ちを自由にして視野を広げ、目の前のことをありのままに受け止める。いい具合に肩の力を抜きながら撮影できるのは、寄っても引いても、開放でも絞っても、穏やかな画を描き続けてくれるXF18mmF2の力だと思います。
このレンズにハマりそうな自分がいます。
あとがき
巷ではあまり評判が良くないことを、撮影後に知りました。
甘い周辺画質、眠い解像力、遅いAFなどなど。今回の撮影では全く気にならなかった評価が多数あり、驚いている次第です。
単に僕が分からないだけなのかもしれませんし、個体差の問題なのかもしれません。
もしもそれらの低評価が真実であっても、今回撮影できたような「優しい描写」と「OVFでの快適性」が備わっているのなら、積極的に使いたいと思うレンズに違いありません。
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