富士フィルムサービスステーションのレンタルサービスでXF56mm F1.2 Rを使ってからというもの、すっかり中望遠レンズの魅力にはまってしまっています。
「FUJIKINA 2017 京都」でも同様のサービスが利用できるということで、今回は、フジノンレンズ「XF60mm F2.4 R Macro(以下XF60mmF2.4)」をお借りしました。
”解像番長”の異名はいかほどのものか。XF56mm F1.2 Rとの違いを交えながら、レポートしたいと思います。
中望遠域での使用感
フルサイズ換算91mmの画角
XF60mmF2.4は、フルサイズ換算で91mm相当の画角。XF56mm F1.2 Rは85mm相当なので、ほんの少しだけ被写体を手元に引き寄せることができます。
ですが、屋外でスナップ撮影をする分には、ほとんど差を感じることはありませんでした。どちらのレンズも、背景を整理し、主題を浮き上がらせるのに最適な焦点域だといえます。
画面全体、絞り全域にわたって、”端正”な描写
写りに関しては、とても”端正な写り”をするなぁ、という印象を持ちました。
評判どおり解像力が高く、開放でも、周辺部分までビシっとした線で輪郭を描きます。冷たい風にさらされ、カサカサになるまで乾いた枯れ葉の様子がよく伝わってきます。
XFレンズでは常識の色乗りの良さ
色乗りやコントラストが優れていることについて、XFレンズでは、もはや標準仕様ですね。どのレンズを使っても、こってり、はっきりとした色を見せてくれます。
なめらかで、上品。節操のあるボケ
開放絞りはF2.4なので、XF56mm F1.2 Rとくらべると、ボケの”量”は少し減ってしまいます。
ですが、ボケの”質”はたいへん素晴らしいもので、同程度の美しさに感じました。とてもなめらかで、嫌味を感じさせない上品さがあります。精緻さと優しさが共存している感じです。
ボケすぎない、というのも節操があって良いものですね。
AFのスピード&精度とも、XF35mm F1.4と同程度
「XF60mmF2.4は、AFに難あり」というのが、巷の評価のようです。
けれどもX-Pro2で使ってみた限り、巷の評価ほどネガティヴな印象は持ちませんでした。感覚でいえば、XF35mm F1.4 Rと同じぐらい。
X-Pro2+XF35mm F1.4 Rなんて鈍足だぜ、と言われればそれまでですが、少なくとも街角スナップでストレスを感じることはないとは思います。
写真(↑)は、僕もご婦人も動いているなか、撮影したものです。サッと構えて、ササッとシャッターを切ったのですが、ピントは外していません。髪の毛一本一本も認識できるぐらい、きちんと解像しています。
このレンズで遅さを感じるのは、動き回る子供など、完全なる動体撮影のときだろうと思います。
マクロ域での使用感
日常使いに便利なハーフマクロ
マクロ撮影ができるところが、XF56mm F1.2 Rとの大きく違う点。
最短撮影距離は26.7cm、最大撮影倍率は0.5倍。マクロといっても等倍マクロではなく、ハーフマクロです。等倍マクロほどには大きく写すことはできませんが、日常のちょっとした場面で使うには十分なはたらきをみせてくれます。
写真(↑)は、道端に咲いていたツバキです。子供がトイレに行っている間、待ち時間に撮影しました。レンズ交換をすることなく、こういう写真がサッと撮れるのは良いですね。被写体の幅が拡がり、世界が違って見えてきます。
中望遠域と同じく、きっちり解像、色乗り、コントラストとも申し分ありません。ボケもとてもおだやかで、やはり”品”を感じます。
マクロ域では、AFが派手に迷う
ただし中望遠域とは違って、マクロ撮影時のAFについては、お世辞にも良いとは言えません。
中望遠域からマクロ域にピントを合わせようとすると、迷宮に入りこんでしまいます。一旦、ピントを外してしまうと、永遠に合焦することはないようです。グィーン、グィーンとフォーカシングを実行したあと、はたとピント合わせをあきらめます。
そんなときは早々とMFで追い込むことをオススメします。
X-Pro2を使っていたことも幸いして、MFでのピント合わせに苦労はしませんでした。ボケが綺麗、解像力が高いこともあって、ピントピークは分かりやすい方だと思います。
一度、MFで合焦してしまえばAFも復活するようで、MFとAFを行き来しながら微調整をすれば極上の画質を得ることができます。が、そこにもちょっとしたクセが。。。(後述)
その他の使用感
サイズはø64.1mm×63.6mm、重さは215gなので、コンパクトな部類に入ります。
数値だけみれば、XF35mm F1.4 R(ø65.0mm×50.4mm 187g)よりも少しだけ大きいわけですが、実際のハンドリングはまったくといっていいほど同じです。
ただし付属フードは3倍ぐらいの長さがあるので、全体としては中望遠レンズっぽい長さになってしまいます。
このフード、金属製で非常に良いモノなんですが、気に入らない方は結構いるみたい。そんな方は35mm F1.4 Rのフードを流用されているようです。
絞りやフォーカスリングのトルク具合も、これまたXF35mm F1.4 Rと似ています。若干、”軽め”だと僕は思いますが、好き嫌いのレベルで片付けられるでしょう。
問題は、フォーカスリングがバイワイヤ(電子制御)方式なこと。フォーカシングレンズとリングは、機械的に連動していません。
さきほども書きましたが、このレンズは中望遠域からマクロ域に突入したとき、AFが迷子になることがあります。
一旦、迷子になってしまうと復帰は困難で、MFで追い込まなければなりません。バイワイヤ方式だと、どれだけ回せば良いのか検討が付きにくく、フォーカシングに余計な時間が費やされてしまうのです。
マクロ域がないXF35mm F1.4 Rでは、気にならなかったんですけどねぇ。
あとがき
XF56mm F1.4 Rに続く、中望遠レンズとしては2本目となるXF60mm F2.4 R Macroのレポート。数時間の使用でしたが、とても充実した撮影になりました。
中望遠域にくわえ、マクロ域がカバーされていると、こんなにも写欲が湧くものなんだと、改めて知ることができました。標準レンズだったら、見過ごしていたり、寄れないからとあきらめていたものまで、写真におさめることができるのですから。
手持ちのXF35mm F1.4やXF23mm F2では、決して味わえない世界。ムコウ側とコチラ側。特に、コチラ側の小さな世界に、奥の深さが存在するのだと。
今年、2017年には、新しいマクロレンズの発売が予定(ロードマップ)されています。その名も、XF80mm F2.8 LM OIS WR Macro。手ぶれ補正、防塵防滴、リニアモーター駆動による高速なAFと、てんこ盛りな模様。
きっと高価なレンズになるのでしょうけども、これは揃えなければいけないレンズのような気がしています。
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