「防塵防滴・F2コンパクト三兄弟」の試写レビューも、最後の1本になりました。
今回は、35mm判換算76mm相当の焦点距離を持つ、フジノンレンズ「XF50mmF2 R WR(以下、XF50mmF2)」です。
焦点距離が重複するXF56mmF1.2 R WR APDを除けば、現段階でリリースされているXFレンズの中望遠レンズ(単焦点)はコンプリートとなります。
これら3本のレンズと、なにがどれだけ違うのか。主観満載でレポートしたいと思います。
XF50mmF2 R WRの使用感
X-Pro2に装着して撮影しましたが、新しいレンズを使っている感じが全くありません。
それもそのはず。
XF23mmF2、XF35mmF2を合わせた「防塵防滴・F2三兄弟」は、形状やサイズ感、操作性が、とてもよく似ているからです。
直径60mmに統一された絞りリング
三兄弟のパッケージに関する各仕様をまとめると、以下のとおり。
XF23mmF2 | XF35mmF2 | XF50mmF2 | |
外 径 | Φ60mm | ||
全 長 | 51.9mm | 45.9mm | 59.4mm |
重 量 | 180g | 170g | 200g |
全長で最大13.5mmの差はありますが、ほとんどがピントリングの長短分。実使用上は、指の掛かり具合に余裕があるかどうか程度の影響しかありません。重量についても、同じような感想です。
それよりも、外径寸法が60mmで統一されていることの方が、操作性において重要なポイントになります。
これら3本のレンズにおける「外径」は「絞りリングの直径」に等しく、頻繁に操作する部分です。なので、この部分が同じ寸法だと、操作フィーリングに全く違和感を覚えません。
ねっとり目に統一されたトルク感
さらに、絞りリングの「ヌメリ感」や「クリック感」も、三兄弟共通の仕様です。
刻印はありませんが、1/3段づつ、しっかりとした手応えがあります。しかも、ひっかかることなくスムーズに回転する。
XF35mmF1.4やXF56mmF1.2のような軽めの調整よりも、誤動作が減り、造りの良さを感じられるので、僕はこちらの方が好みです。
AFスピードはシリーズ基準だが、迷う場面が少しある
AFスピードに関しても、三兄弟基準の高速フォーカスがキープされているので、全くもって不満に感じる場面はありません。最新レンズなのだから、少しぐらいはスピードアップしていてもよさそうなのに、とは贅沢な意見なのでしょう。
ただし、他の2本にくらべて、迷う場面は若干多いように感じました。おおむね、Xシリーズではおなじみの、低コントラス&光量不足の状況下での撮影時です。
ピントを外したあとの復帰時間が、ややスローなのも気になるところ。スィィィィっと、復帰までの作動は、かなりのんびりしています。これはXF55-200mmやXF60mmでも感じたことなので、望遠レンズの宿命なのかもしれません。
けれどもXF56mmやXF90mmでは感じなかったことを考えると、値段の差なのかもしれませんが。
ピント合わせで迷う場面が少しある、と書きましたが、違和感を感じるのはこれぐらい。1本のレンズをクロップモードで使っているような感覚ですよ。
XF50mmF2 R WRの描写
息苦しいほど、カリカリ&シャープな描写
XF50mmF2が捉える世界は、非常にシャープで高解像。少しの妥協も許さないような、強い意志を感じる描写です。撮影した画像を見ていると、息が詰まりそうになります。
この写真(↑)はF2.5で撮影したものですが、解像力はすでにピークに達しているように思います。
お次はF4まで絞った写真(↑)。撮影した日は、梅雨の合間の晴天で、ギラギラした日光が容赦なく降り注いでいました。そんな状況も加味され、ハードな印象の1枚になりました。
開放では少しゆるむ気配も感じますが、それでもビシっとした画作りは崩れません。
F8まで絞り込んでも、さらに解像感が上がるわけではないようです(↑)。
言い換えれば、開放からトップレベルの結像能力を発揮するということなので、電子シャッター非搭載のボディなら、NDフィルターは必須のアイテムになりそうです。
逆光に動じないのは、もはや標準仕様なのか
逆光であっても、ビクともしない写りっぷり。画面全体にわたってコントラストの低下はみられません。ビルのサッシが、どこまでもくっきりと輪郭を保っています。
これだけ輝度差がある場面でも、質感がきっちりと描き分けられているのには驚きました。
特に、光が差し込んでいる画面奥の金属板とシートなんか、よく粘ってくれたなぁ、と感心します。もはやXFレンズにとって、逆光は悪条件ではない、ということでしょうか。
なだらかに、徐々に、着実に、ボケていく
前ボケ、後ろボケとも、とても素直なボケ具合だと思います。
XF35mmF1.4のような、ふんわりと輪郭が消失していくようなものではありません。一歩一歩確実にボケていく感じですね。
玉ボケも綺麗です。
歪みがないわけではありませんが、スナップ撮影において、アラ探しのように、厳しいジャッジをするのもいかがなものかと。
「中望遠」という焦点距離のレンズに対して、”ボケ”についての何たらを求めるのなら、XF50mmF2では物足りなさを感じるかもしれません。
35mm判換算76mmの焦点距離は、このカテゴリーでは短めで、開放絞りもF2(35mm判換算F3)なので、うっとりするような”ボケ”を手に入れるには、少々スペックが不足しています。
けっこう寄れる
それでも最短撮影距離が39cmと、けっこう”寄れる”レンズなので、被写体や構図を工夫すれば、ボケを活かした写真を撮ることが可能です。
今回の試写では、撮影機会がありませんでしたが、この最短撮影距離ならテーブルフォトでも活躍しそうです。少し、身体を仰け反らせながらになりますが。
それでもやはり、人物を浮かび上がらせるようなポートレート撮影には不向きだと思うのですが、どうなんでしょう。
自然な間合いが取れる焦点距離
35mm判換算76mmの焦点距離は、中望遠レンズとしては短い。けれども、標準レンズからのステップアップとしては、スムーズに移行できる焦点距離です。
上の写真(↑)のような構図の場合、XF35mmF1.4(換算50mm)では経験上、1歩か2歩、踏み出て撮影することになります。ですが、XF50mmF2なら、気付いたその場で構成することができます。
建物の2階など、少し高い位置にあるオブジェクトなんかも、画面いっぱいに捉えることが可能です。
ふと何かを感じた瞬間にカメラを向ければ、その”何か”が、スッと被写体として収まる感じ。その人の持つ視力やモノの見方によって違うのかもしれませんが、僕の場合、凝視せずに見つめた1点が、そのままフレームに貼り付く感覚で撮影できました。
XF56mmF1.2(換算85mm)やXF90mmF2(換算137mm)では、少し引かなければならない場面があったことを思うと、撮影テンポが乱れることなく、自然な間合いの焦点距離だなぁ、という印象です。
あとがき
優等生と言っていいほどの描写と、違和感なく扱えるパッケージング、そして焦点距離。とっても良いレンズだとは思うのですが、魅力的なレンズか?と問われると、僕はイエスと答えられない。
それはおそらく、所有レンズたちの焦点距離との兼ね合いと、中望遠レンズ(単焦点)に期待する表現力が原因です。
- 柔らかくて繊細な描写
- うっとりするようなボケ
を、中望遠レンズに求めてしまう。色々なレンズを使ってみて、ようやくこの結論に至りました。
年内には「XF80mm F2.8R LM OIS WR Macro」の発売が予定されています。
ですが、10万円を超えるのは確実でしょうし、お財布的には候補にならない可能性が高い。スペック的には最高の中望遠レンズになりそうなんですけどね。
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