僕がキャンプ用品を購入するときは、たいていの場合、”機能”、”見た目”、”値段”のバランスがとれた、”コスパに優れている”ことを重視します。
アメニティドームに合わせて購入した、インナーマットなんかはその代表例です。
”機能”や”見た目”が良くても、値段との釣り合いがとれていない、あるいは相場からかけ離れていれば、その商品を購入することはほぼありません。
とは言いつつも、「どうせ買うのなら」という思いで、値段に目をつぶって購入したアイテムも、なかにはあります。それがこのイワタニのカセットガスコンロ「カセットフーマーベラス(以下マーベラス)」です。
我が家のキャンプ用品の中では珍しく、”コスパに優れない”アイテムです。
マーベラスの性能は、普通+α程度
「マーベラス」の基本スペックは以下の通り。
最大発熱量 | 3.5kW(3,000kcal/h) |
連続燃焼時間 | 約70分 |
点火方式 | 圧電点火方式 |
安全装置 | 圧力感知安全装置 |
容器着脱方式 | マグネット式 |
本体サイズ | 収納時:321(幅)×377(奥行)×109(高さ)mm 使用時最大サイズ:321(幅)×372(奥行)×322(高さ)mm |
重 量 | 約3.0kg |
カセットガスコンロなんて、どれも同じようなものだと思っていましたが、スペックを眺めてみると違いはあるものです。
アウトドア用途では、”普通”の火力
最大発熱量が3.5kW(3,000kcal/h)は、屋内専用コンロ(たいてい3.0kW以下)に比べ、若干高く設計されています。
けれどもトップレベルかというとそうではなく、世の中、より高火力のコンロが販売されています。イワタニの「カセットフーBO EX」。
メーカー商品ページでは、「シリーズ最強火力」とうたわれており、マーベラスの2割増しである4.1kW(3,500kcal/h)。これは台所据付ガスコンロの強火力コンロと同じレベルです。通常の料理ならば、これ以上の火力は必要ないでしょう。
ちなみにアウトドア用コンロといえば、思い浮かべるのがツーバーナーだと思います。
例えばコールマンが販売している「413Hパワーハウス(R)ツーバーナー」の火力は、
- メインバーナー:約3,650kcal/h
- サブバーナー:約2,750kcal/h
メインバーナーの火力は、上述の「BO EX」と大体同じぐらい。サブバーナーの火力は、「マーベラス」よりも少し低いぐらいですね。
逆に言えば、「BO EX」は、アウトドア専用品を含めてもトップレベルの火力であるのに対し、「マーベラス」の火力は並程度、ということになります。
風除け機構も、”普通”に使える
アウトドアにおける”火”にとって、大敵といえるのが”風”。「マーベラス」には2つの対策が施されています。
トップカバーが、”風除け”になる
ひとつめは「トップカバー」。
個性的なルックスを印象づけるこのカバーは、収納時にバーナー機構を守る役割に加え、使用時には”風除け”として活躍します。
このような風除けは、ツーバーナーにとっては当たり前の装備です。
このトップカバーが、”風除け”としてどれぐらいの効果があるのかと言うと、「無いよりは、あった方がはるかにマシ」という感じです。あっ、良い意味ですよ。
というのも、基本的には1方向の風しか防ぐことができない構造なので、3方向からの風を防ぐツーバーナーと比べ、どうしても見劣りしてしまうのです。このあたりは、さすが専用設計。餅は餅屋ですね。
けれども、風向きに対してコンロの角度を変えたりしながら使うと、十分な効果は得られるのでご安心を!
決して見せかけだけの”風除け”ではありません。
風防リング
ふたつめは、バーナー周りに「風防リング」が設けられている点。
これがあることによって、風が炎を横倒しにするのを和らげ、効率よい加熱を実現します。
実際、確かに炎が安定しているように思いました。風防リングが無いコンロだと、少しの風が吹いただけでもゆらゆらと炎が揺れ、加熱に時間がかかります。
でも風防機能なら、さらに上をいく商品があります。
その名も「風まる」。
”ウィンドブレイクこんろ”というサブタイトルからも、風防力の高さが売りのコンロです。
「マーベラス」の風防と何が違うのかというと、こちらは外・内2重の風防で風をコントロールする構造になっています。
燃焼に必要な風は取り入れ、余計な風はシャットダウンする。この作業を2段階で行い、燃焼効率をおおよそ2倍(風防無しのコンロ比)に高めているのです。
「マーベラス」の風防は1重なので、ここまでの効果はないでしょう。それでも一定の効果は実感できるので、使っていて不満は感じることはありません。
バーナーヘッドはアウトドア仕様。多孔式バーナーを採用。
唯一、マーベラスが他のカセットガスコンロよりも、アウトドアな点。バーナーヘッドに、”多孔式バーナー”と呼ばれるものが採用されています。
バーナーヘッドには炎が吹き出る孔があります。多孔式バーナーの孔は、数が多く、サイズが小さく作られてるのが特徴です。そうすることで一つ一つの炎の長さが短くなり、風の影響が受けにくくなります。
アウトドア用のバーナーでは、常識のように用いられている構造です。
点火した様子は、上の写真の通り。確かに、コンパクトかつ勢いのある炎です。通常のバーナーヘッドにくらべて、炎の揺れが少ないように感じます。
この点に関しては、「BO(ボー)EX」にも「風まる」にも備わっていない機能なので、「マーベラス」のアドバンテージと言えるでしょう。
そこそこ強度のある五徳
五徳は直径約5mmのステンレス棒で作られていて、普通に使う分には不安を感じない強度があります。12インチのダッチオーブン(約8.8kg+具材)を乗せて調理をしても、びくともしないほど。ただし、メーカーが耐荷重をアナウンスしているわけではないので、あくまでも非公式にはなりますが。
今では、ダッチオーブンでの使用を想定した「カセットフー タフまる(イワタニ)」という商品が発売されています。
耐荷重は20kg。12インチのダッチオーブンに満タンの水(8.2L)を入れても大丈夫な造りになっています。
しかも「風まる」と同じ「ダブル風防ユニット」や「多孔式バーナー」を備え、専用のキャリングケースも付属するアウトドア仕様。屋外使用がメインなら、アリな一品です。
マーベラスは、バランスのとれたオールマイティなコンロ
これまでお話してきた以外にも、いくつか項目を加え、表にまとめてみました。
マーベラス | BO EX | 風まる | ツーバーナー | 2243バーナー | |
火力 | ◯ | ◎ | ◯ | ◎ | ◎ |
風防 | ◯ | ◯ | ◎ | ◎ | △ |
携帯性 | ◯ | ◯ | ◯ | △ | ◎ |
収納性 | ◯ | ◎ | ◎ | △ | ◎ |
設置安定性 | ◯ | ◯ | ◯ | ◎ | △ |
「ツーバーナー」や「2243バーナー」のように、アウトドア向けに設計されているコンロは、状況に応じた使い分けを前提としているので、強みがはっきりとしています。
「BO EX」や「風まる」は、屋内使用に軸足を置きながら、なおかつ一発芸を持つことでアウトドアでの使用に対応しています。
「マーベラス」はバーナーヘッドこそアウトドア仕様ですが、一発芸と呼べるような大技はありません。小技をバランス良く結集させたオールマイティなコンロだという印象。
「BO EX」や「風まる」になぞらえて言えば、屋外使用に軸足を置きながら、屋内使用も無理なくこなすコンロ、ということになります。
値段はツーバーナーと同等。
問題は値段です。
実売で約10,000円(定価21,600円)という値段は、「BO EX」や「風まる」のおおよそ2倍。ガス式ツーバーナーとほぼ同じ値段です。
機能面だけ考えると、この値段はあり得ません。せいぜい「BO EX」や「風まる」と同価格帯が適正ではないでしょうか。
デザインに一目惚れしたなら、”買い”です。
と、このように考える僕が、「マーベラス」を購入した理由。それは見た目の良さに一目惚れしたから。
初めての出会いから1年間、この値段差に見合う理由を考えましたが、思いつきませんでした。コスパを考えるのなら、断然、他のコンロを選ぶべきことは明白です。でも選べなかった。
あまりにも「マーベラス」が気に入っていたんですね。最後はポイントやらキャンペーンやら適当な理由を付けて、強引に購入してしまいました。
あとがき
喉元すぎれば何とやら。これぐらいの値段なら、買ってしまえば気にならないものですね。あまりこういう買い方をしないのでドキドキしましたが、今では本当に買って良かったと思っています。
機能的には大したものではないかのように書きましたが、使ってみれば小技が要所で効いているのを実感します。
- 縦置き可、元箱不要で収納しやすい。
- ケース無し、本体のみで完結するので、キャンプ設置時に余計な場所を必要としない。
- ゴトクも本体に半固定なので、無くならない。
- ゴトクが結構丈夫。ダッチオーブン(12インチ)を乗せてもびくともしない。
- 燃料はCB缶なので経済的。
- キャンプに生活感が滲み出ない。
特に「キャンプに生活感が滲み出ない」というのは重要。カセットガスコンロは一歩間違えば、◯乏感が出てしまうので要注意です。その点「マーベラス」なら問題無し。逆にサイト内を明るく彩ってくれますよ。
持ち運びや操作も簡単、そこそこパワーがあり、少々の風にも負けない。アウトドア・日常問わず、活躍の場が多い1台です。
他のコンロと比べれば割高ですが、スペックには現れない魅力が詰まっています。そうそう壊れるものではありませんので、見た目が気に入ったのなら、買って後悔することはないと思いますよ。
[追記]マーベラス(旧)とマーベラスⅡ(新)の違い
2016年10月に、マーベラス”2”にリニューアルされました。以下、変更点をまとめます。
- サイズが、数ミリ程度大きくなった(収納時:幅329×奥行380×高さ110mm)
- 重量が、200gほど軽くなった(約3.0kg→約2.8kg)
- カラー展開が、シャンパンゴールドのみ
- 生産国が、日本になった(旧モデルの生産国はベトナム)
大きくなったとはいっても、誤差の範囲でしょう。使い勝手は変わらないと思います。むしろ缶コーヒー1本分ほど軽くなったので、取り回しは良くなっているんじゃないでしょうか。
シャンパンゴールド1色になったのは、マイナスだと思います。旧モデルのあの色こそ、遊び心があって良かったのに。ちょっと大人っぽくなりすぎてやしませんか。メイドインジャパンになったことが関係しているのかなぁ。
WILD-1の別注カラーなんてのも素敵です。