X-Pro1の使い心地は、昔のカメラの感覚に似ています。基本的に、「露出」のコントロールをダイヤル操作で行うからです。
X−Pro1はダイヤルでの操作が基本
露出とは、カメラが記録する「光の量」のこと。
- 絞り
- シャッタースピード
- ISO感度
という、3つの要素で決定します。
X-Pro1では、
- 絞り→レンズ鏡筒部に付いている「絞り環」
- シャッタースピード→軍艦部(カメラ上部)に配置された「ダイヤル」
でおこないます。
いずれの操作も、まだカメラが機械のオーラを強くまとっていたころの伝統的なユーザーインターフェースです。懐古的な感覚をおぼえるのは、自然な成り行きなのです。
ISO感度まわりの進化が撮影をより自由なものに
カメラがデジタル時代に突入し、露出を決定する「ISO感度」に革命が起きました。
フィルム時代、ISO感度の変更は不自由だった
フィルムカメラ時代、ISO感度は使用するフィルムに依存していました。
屋外の撮影が中心のときはISO100のフィルムを使い、光量が足りない室内撮影がメインのときはISO400やISO800といった高感度用のフィルムを使うというように。
状況や仕上がりのイメージによって、フィルムを使い分ける必要があったのです。
これには大変不便な面があります。
たとえば撮影の途中でISO感度を変える場合、それまで使っていたフィルムを抜き出し、目的のフィルムに交換しなければなりません。その場合、一度抜き出したフィルムはもう使えません。
手間な上に、コストがかさむ。
フィルムは不自由なメディアだったのです。
デジタル時代、ISO感度は自由に変更できるようになった
デジタル時代に突入し、ISO感度は自由に変更できるようになりました。物理的な交換作業を強いられることも、余計なコストもかかりません。
1枚ごとに変更することはもちろん、ISOブラケティング機能を使えば、1枚の画像から複数の異なったISO感度の画像を作成する、なんていうことも可能です。
AUTOに設定しておけば、適正露出になるようカメラが自動でISO感度を調整してくれます。撮影者は絞りとシャッタースピードという、表現に直接影響のある操作のみに集中するだけです。
高感度撮影時の画質が素晴らしい
それに加え、高感度時の画質の劣化もきわめて少ない。
フィルム時代の高感度とは、ISO400や800が一般的。ISO1600は超高感度といわれ、特殊な撮影向き。ノイズが目立ち、お世辞にも綺麗とは言えない画質でした。
それが昨今のデジタルカメラでは、ISO1600なんて普通に使えます。しかもノイズレスでクリアな画質。
ソニーの「α7sⅡ」なんて、最高感度はISO409600。暗闇でも手持ち撮影が可能というのだから驚きです。
X-Pro1も高ISOの画質がとても綺麗。”高感度番長”なんて異名を持つほど。
ISO3200はもちろん、ISO6400だって、ためらうことなく使うことができます。
今でもAPS-Cクラスの中で、間違いなくトップクラスでしょう。
X-Pro1に残された不自由
このようにISO感度まわりに革命が起き、写真撮影は自由なものへと進化しました。
けれども、露出をコントロールする3つの要素の役割は、今も昔も同じです。
「絞り」と「シャッタースピード」がもたらす表現
「絞り」と「シャッタースピード」が、表現にどのような影響があるのか?
- 絞り:開けばボケを生み、ふわっとした表現の写真に。絞ればピントが合う範囲が広くなり、シャープな印象の写真になる。
- シャッタースピード:速くすれば動く被写体を止めて写すことができる。遅くすればブレを生み、躍動感などを表現することができる。
これらは互いに関係し合うので、組み合わせによって他にも様々な表現が生まれます。詳しくはニコンの公式HPなどを参考にしてください。
「ISO感度」がもたらす表現
残るはISO感度。
- ISO感度:基本的には明るさの調整。ノイズを表現に加えたいなど、特殊な場合を除いては。
つまり、絞りとシャッタースピードが一定の場合、ISO感度を調整してコントロールできるのは「明暗」。ボケや被写体の動きといった表現には、直接影響をおよぼしません。
つまり「露出補正」と同じということです。
露出補正とは
露出補正とは、カメラが決めた適正露出から露出を変えて、写真を明るくしたり暗くしたりすることです。
<…中略>
撮影した画像を見て、明るくしたければ+側に、暗くしたければ-側に露出補正して、撮影しなおすことができます。
(ニコン公式HPより引用)
機種によって操作方法は様々ですが、X-Pro1には独立したダイヤルが用意されています。しかも右手親指のすぐ上の一等地に。
このダイヤルで、素速く簡単に明るさの調整ができます。
仮にISO感度で露出補正をするなら、次の操作が必要です。
- Qボタンを押す
- ISO感度の項目にセレクタを移動
- ISO感度を変更
とてもまどろっこしい。
あらかじめ「Fnボタン」に割り当てておくという方法もありますが、ひと手間かかることには変わりないので、積極的に使おうという気にはなりません。
X-Pro1では『絞り優先&シャッタースピード優先&ISO感度AUTO』時に露出補正ができない
便利な露出補正ダイヤルですが、X-Pro1の場合、ISO感度をAUTOに設定していると、全く機能しなくなります。
例えば「水をふき出す噴水」を撮影するとします。
はじめは水の流れを止め、背景をボカして写そうとして、
- シャッタースピード:1/250
- 絞り:F2.0
- ISO感度AUTO:250
に設定。しかし、もう少し背景に写っているものの輪郭を出そうと思い、F4まで絞ることに。
- シャッタースピード:1/250
- 絞り:F4
- ISO感度AUTO:1000
このときカメラは露出を変えまいとして、2段絞った分、ISO感度を2段分あげ、ISO1000に自動で調整します。ここまではいい。
さらにこの絞りとシャッタースピードのまま、つまり背景のボケ具合と水が止まった感じをそのままに、もう少し画面を明るくしたいなぁと思ったときが問題なんです。
露出補正ダイヤルが機能しないX-Pro1では、現時点のISO感度を頭で記憶し、手動でAUTOから調整しなければならない。しかもあの面倒くさい操作で。
あとがき
これだけ高感度画質のクオリティが高いX-Pro1なので、僕としては設定をAUTOにしておきたいのです。
けれども「露出補正ダイヤルが機能しない」という、少し足らずの仕様によって、泣く泣く「絞り優先モード」か「シャッター優先モード」を使っている、という現実があります。
ペンタックスでは、早くから「TAvモード」として実装され、ダイヤル一つで露出補正を自由に調整できるような仕様になっています。
富士フィルムでも、X-T1が最新のファームウェアで対応されました。ここが富士の良いところですね。
X-T10には初めから備わっている機能なので、この流れから考えると、X-Pro2には当然搭載されるだろうとは思っているのですが、どうでしょうか。
欲を言えばきりがありませんが、万一、ファームウェアの更新で対応いただけるのならば、ペケプロもまだまだ長生きできるんですけどねぇ。