フジノンレンズのラインナップも増えるにつれ、焦点距離的に重複する部分が出てきました。
例えば、神レンズと称される「XF35mmF1.4」と、防塵防滴性能を備えた「XF35mmF2」。どちらも換算53mmですが、レンズ構成が異なるためか、描写はずいぶん違います。
こうした描写の違いは、レンズ性能を評価する指標のひとつ「MTF曲線」にも表れています。
MTF曲線が全てを語るわけではありませんが、あーだこーだと妄想する分には、大変おもしろい。
というわけで、今回は23mm比較。
画質に拘りをみせる「XF23mmF1.4」と、コンパクト設計の「XF23mmF2」。果たしてMTF曲線ではどのような違いがあるのか。比較&妄想したいと思います。
MTF曲線で見る「XF23mmF1.4」
まずはXF23mmF1.4から。MTF曲線は富士フイルムの公式サイトから引用しました。
[A-a]ヌケの良さ
空間周波数15本/mmのグラフは、ヌケの良さを示すもの。1.0が満点で、0.8以上が優秀、0.6以上が良好なレンズ、とされています。
XF23mmf1.4は、レンズ中心から7.5mm付近までM方向、S方向ともに0.8を超えています。両曲線がピタッと合わさっているので、ここまではボケも自然で、かなりクリアな描写が期待できます。
そこから周辺部にかけてS方向は落ち込み、12mm以降は0.6以下に突入。最周縁部では0.4近くまで低下していますが、これだけ端だと、実使用上は気にならないんじゃないかと思われます。
ですが両曲線の乖離は広がっているので、ボケ味に多少の影響があるのかもしれません。
[A-b]解像力
一方、空間周波数45本/mmのグラフは解像力を示します。数値の捉え方は、上記と同様です。
XF23mmF1.4の解像力は、中心付近でも0.6程度。カリッカリッにシャープな描写というわけではなく、ほど良く結像するレンズだと想像します。
M方向は全域でその水準を保っていますが、S方向は周辺に向かうにつれ、ゆっくりと低下していきます。けれども最周縁部以外、両曲線の差分は少なめということもあって、全般的に解像力は良好と言えそうです。
MTF曲線で見る「XF23mmF2」
次に、XF23mmF2のMTF曲線を眺めてみます。
[B-a]ヌケの良さ
レンズ中心から7.5mm付近まで、M方向、S方向ともに0.8以上であることや、M方向がほぼ全域でその水準をキープしていることは、XF23mmF1.4と同じです。
けれどもS方向について、その後の低下量は少なく、最周縁部分でも0.6以上を維持していることは、XF23mmF1.4には見られなかった特長です。
また両曲線の乖離も少なく、素直なボケが期待できそうです。
XF23mmF2は、全域でコントラストが高く、ヌケの良いクリアなレンズだと言えます。
[B-b]解像力
解像力に関して、レンズ中央付近は良好な値を示していることや、周辺部にかけて徐々に低下していくことは、XF23mmF1.4と同じです。
ただしM方向が一緒に落ち込んでくるのは、XF23mmF2だけに見られる特徴。ハイコントラストな分、画面の端では描写が若干甘くなってしまうことが想像できます。
実際に使用してみて
両レンズとも、実際に使用したことがあります。
コントラストに関しては、概ねMTF曲線を読み解いた通り。XF23mmF1.4、XF23mmF2ともにハイコントラストで、ヌケの良い描写を見せてくれます。
一方、解像力については、開放から安定しているXF23mmF1.4に対し、XF23mmF2は若干の甘さを感じる結果に。ひょっとしたらM方向の落ち込みの有無が関係しているのかもしれません。
あとがき
さらに言えば、
- XF23mmF1.4→線が細く、繊細。主題を浮き上がらせる、印象的な描写。
- XF23mmF2→線が太く、力強い。現実を切り取る、写実的な描写。
というように、表現の方向性はずいぶん異なります。
ボケ味を含め、この辺のことはMTF曲線では読み取れない部分。けれども波形的には明らかな違いがあるので、実際の写真と答え合わせしながら妄想するのも、なかなか楽しい作業ではあります。
他にもXFレンズ同士でMTF曲線を比較&妄想しています。