今回レポートするカメラは「Leica Q(Typ 116)」。まさかのライカです。
と言っても、自腹で購入したわけではなく、Leica京都店のとあるイベントでお借りしたものですけどね。
実売約60万円。しかもコンパクトカメラでいらっしゃいまする。そんなセレブアイテム、この僕に買えるはずがありません。
3時間ほどのお付き合いでしたが、ひとつの記事にできるぐらい堪能してきたので、ご一読ください。
うっとりするほど高画質
僕にとって、はじめてのライカ、しかもはじめてのフルサイズセンサーなものですから、おのずと描写に期待が膨らみます。
これこそがライカの色なのか。褐色から彩色まで、見事な調和にほれぼれ。
なによりもまず、その”色”にほれてしまいました。噂には聞いていましたが、ライカ独特の味わい深い色合いに、しょっぱなから魅了されます。
なかでも空の色が独特で、子安塔の朱色と調和のとれた、落ち着いた色味をみせてくれます。デジタルっぽさが少しも感じられない仕上がりです。
別角度からもう1枚(↑)。
太陽の光を受けて明るく照らし出された柱の朱色と漆喰壁の白色、側面の光量に乏しいシャドー部の色、手すりの茶色や紅葉が進んだ葉の黄色や赤色まで、同じ画面の中で絶妙な調和をみせてくれます。色味だけを眺めていてもあきないほど。
お隣にある泰産寺の窓に、いろいろなものが映り込んでいました。子安塔や清水山、空や木々など。額(?)の金色も含め、落ち着いた雰囲気の色合いが、その場の情景にピタリとはまっています。
丁寧に描かれる輪郭、やわらかで上質なボケ
Leica Qには2400万画素のフルサイズCMOSセンサーが搭載され、SUMMILUX 28mm F1.7 ASPH.という固定式大口径単焦点レンズが組まれています。
上の写真(↑)は開放で撮影したものですが、ピントが合っている部分はシャープさ優先ではなく、輪郭を丁寧に描き出す印象。
画面奥へと続くなだらかなボケと、シャドーへ落ち込む豊かな階調から、このセンサーとレンズの組み合わせの質の高さが伝わってきます。
とにかくボケがとても綺麗な印象を受けました。画面中央に映る丸いボケなんて、ほぼ真円に形作っています。とろけてなくなる最後の一瞬まで、その存在を伝えようとするかのように。
凄まじい逆光耐性
このセンサーとレンズの組み合わせは、逆光での撮影でも崩れることがありません。
西日を真正面から受けた上の写真(↑)のような状況でも、破綻することなく、それぞれの輪郭をきっちり描き分けています。太陽光の周囲に位置する木立の枝の一本一本まで、しっかりと写っているのですから、さすがとしか言いようがありません。
ISO3200までかな、実用的な高感度は
普段、高感度撮影に強いX-Pro2を使っているので、正直Leica Qの高感度画質に驚くほどの感動はおぼえませんでした。
上の写真(↑)はISO3200で撮影したものです。
金属のや柱の質感、ボケともに美しい仕上がりだとは思います。
こちら(↑)もISO3200で撮影。
目立った画質低下もなく、臨場感が感じられ、積極的に使っていけるクオリティだと思います。
少し感度を上げて、ISO5000で撮影したものがこちらの写真(↑)。
ブログ用の小さなサイズの写真でも、空に浮かぶノイズやディテールの潰れが確認できてしまいます。
最後にお見せするのは、ISO12500で撮影した写真(↑)です。
これは後述するクロップモードという機能を使って、画角を50mmに設定しています。1.8倍のデジタルズームなので、画質の劣化は避けられないのですが、とはいえこれほどのノイズでは、低感度時の写真にみられた美しさを感じることは到底できません。
ちなみにこの写真(↑)は、X-Pro2のISO12800で撮影したもの。
確認できるノイズも出方が自然でディテールも保たれています。Leica Qの高感度画質は、先代のX-Pro1と同等程度のように思います。すごいぞ、X-Pro2!
AFは速度、精度ともに及第点。暗所ではMF1択かな
AFについては、日中の屋外という状況ではストレスなく撮影することができるレベルです。
日が沈みかけた頃、そそくさと過ぎ去る和尚さんの後ろ姿を捉えた1枚(↑)は、振り向きざまに撮ったもの。これぐらいの光量、間合い、タイミングぐらいなら、Leica Qは対応してくれます。
けれども上の写真(↑)のような暗所での撮影では、ほとんどAFは機能しません。ジーコ、ジーコと迷ったあげく、最後はあきらめてしまういます。
そんな場合はMFが活躍します。 AF/MFの切り替えは、ロックボタン解除一発で可能。あとはピントリングを回すだけで、フォーカシングが行えます。
ピーキング機能が搭載されていて、EVF&背面液晶ともにピントの山が分かりやすい品質なので、暗所以外にの場面でも、積極的にMFを多用しても楽しいと思います。
クロップモードが楽しい!まるで3本のレンズを使っているかのよう
画素数が減っても、クオリティは下がらない
Leica Qには「クロップモード」という機能が備わっています。
デジタルズームを用いて画像を切り出すことによって、28mm、35mm、50mmといった3つの画角に切り替えることができます。「GR Digital(リコー)」や
「X70(フジフィルム)」なんかにも搭載されている機能です。
あたかも3本のレンズを使い分けているような気分にさせてくれるので、スナップ撮影なんかでは、とても重宝する機能だと思いました。 上の写真(↑)はクロップモードは使用せず、画角28mmのまま撮影したものです。
こちら(↑)は画角35mmにクロップしたもの。倍率でいえば、1.25倍になります。
いわばトリミングなので、画素数は35mmの場合は約1500万画素に、50mmの場合は約800万画素に、それぞれ少なくなってしまいます。
こちらの写真(↑)は画角50mm相当で、倍率は1.8倍です。
被写体は全く違うので比較しづらいですが、日常的に使う分には十分な画質が保たれていることが確認できるのではないでしょうか。
これからのスナップシューター機には必須の機能
このモードの1番のメリットは、テンポよく撮影が楽しめることです。
レンズ交換式カメラだと、交換のたびに撮影を止めなければなりません。しかもカメラ本体へのホコリの混入や、レンズの落下といった危険が伴うので、屋外ではあまり交換作業はしたくないのが本音です。
ではズームレンズはどうでしょうか。
まずパッケージングの肥大化が大きなマイナスポイントです。さらに高級レンズを除き、たいていのズームレンズは画角を変えるとF値も変わってしまいます。その点、Leica QのクロップモードだとF値は1.7のまま、全体のサイズも大きくなりません。
被写体や撮影環境によって、気軽に画角を変えられるこのモードは、これからのスナップシューター機には必須の機能だと思います。
あとがき
他にも、シャッターフィーリングやホールディングなど、さすがライカ!と思う部分がたくさんありました。ですが、タッチ操作がモッサリしている点など、国内機種の方が優れていると感じる少なくありませんでした。
Leica Qをお返しした後、X-Pro2で京都の夜の街を撮影しました。光量の乏しい環境の中でも迷うことなくAFが動作することに、改めて感動させられました。
けれども、静かで上品だと思っていたシャッター音が、Leica Qのそれとくらべると、チープに聞こえたのも事実です。
「完璧なカメラ」って、永遠に存在しないのかもしれませんね。