「X-Pro2」の発売日(執筆時2月18日、後に3月上旬に延期)が待ちきれず、展示機を触りに大阪の富士フィルムサービスステーションに行ってきました。
X-Pro1が発売されたのが4年前。その間、多くのノウハウを蓄積し、大幅なスペックアップとなったPro2。期待通り、操作した部分の全てに感動を覚えるほど、隔世の進化を感じました。
今回のレポートでは、初代機愛用者として、特に強く心打たれた部分をピックアップしてご紹介しようと思います。
【朗報1】AF速度が体感2倍!XF35mmF1.4でも瞬時にピントが合うので、買い替え不要。
なによりもまず、このことをお伝えしたかった。
X-Pro1所有者の多くの方が気になっているであろうAF速度。X-Pro2では全くの別物と言っていいぐらいの速さに仕上がっています。
見出しのとおり、体感で2倍。
サービスステーションでは、XFレンズの全てを、展示機はもちろん、持参したXシリーズのカメラでも試させてもらえます。
今回は、展示機のX-Pro2にXF35mmF1.4とXF35mmF2を、手持ちのX-Pro1にXF35mmF1.4を装着し比較してみました。
X-Pro1+XF35mmF1.4 →「クー、ククッピッ」
まずは比較のベースとなる、この組み合わせ。
発売当初は、酷評が噴出するほどのんびりしたフォーカシングでした。それがファームアップを重ねるにつれ、我慢できないレベルではなくなりました。(それでもまだお世辞にも速いとは言えませんが)。
「クー、ククッピッ」っていう感じかな。
このレンズは画質を優先するため、全群繰り出しという方式を採用しています。レンズ全体をごそっと前後に動かし、フォーカシングを行います。なのでどうしてもスピードは遅くなる。おまけに「ジジッ」という、現代レンズではあまり耳にしない異音も発生します。
X-Pro2+XF35mmF1.4 →「クピッ」
それがX-Pro2の組み合わせでは、一瞬でピントが合う。
「クピッ」っていう感じ。体感2倍!
このことは僕にとってサプライズでした。
なぜなら、このレンズには現状以上のスピードなんて望めない、とあきらめていたからです。
先ほども書きましたが、X-Pro1は幾度もファームアップを重ねてきました。けれどもAFの速度に関しては、2年前に施されたファームアップ以来、改善されずにきたのです。なので、てっきりレンズを含め、これが限界なんだと思い込んでいたんです。
その思い込みのせいなのか、X-T1と組み合わせた時にも、それほどスピードアップしているようには感じませんでした。
それがX-Pro2では明らかにスピードアップしているのがわかる。
新しく搭載されたエンジン「X Processor Pro」を筆頭に、処理スピードがこれまでの4倍になったことが、AF速度の大幅なアップに貢献しているそうです。
X-Pro2+XF35mmF2 →「クピッ」
それでは同じ焦点距離の新しい方のレンズ、XF35mmF2との組み合わせはどうなのか。
「クピッ」。
微妙な違いで、文字にするのが難しい。XF35mmF1.4よりも半角分程度速い、といった感じ。実用上、差を感じることはほとんどない、というレベルです。
XF35mmF2には、インナーフォーカスが採用されています。レンズ内部でフォーカシングが行われるため、動作はとても静か。耳を近づけなければ、聞こえないほど。
他にも「防塵防滴」、「コンパクト」といったアドバンテージを持っています。
ですが、
- すでにXF35mmF1.4を持っている
- これらのアドバンテージに必要性を感じない
のなら、買い替えや買い増しをする必要はない、かと思います。
良い意味で裏切られました。
【朗報2】ホールド感が格段に向上。持った時のバランスが良くなりX-Pro1よりも軽く感じる。
次にお伝えしたいことが、「ホールド感」についてです。
X-Pro1に比べ、前面部のグリップが高くなりました。より手がかりが良い形状に改良されている。おまけに背面部はボタン類が整理され、親指を置くのに十分なスペースが確保されています。
そのおかげで持った瞬間、すっと手に馴染み、しっとりと手に収まります。
重量と掴む力のバランスが丁度良く、手にかかる負担が軽減されている。
X-Pro1(450g:バッテリー+メモリーカード含)よりも、45gほど重くなっているにもかかわらず、軽く感じられ、片手での取り回しもラクになりました。
そういえば、X-Pro1を持つ右手は、つまんでいる感が強かった。片手で撮影をしなければならない場面では、少々頑踏ん張る必要がありました。
あまりグリップが張り出し過ぎるのも無粋なので、上手い落とし所だと思います。
【朗報3】ハイブリッドマルチビューファインダーの進化は、OVFを積極的に使いたくなるレベルまでアップ。
X100Tから、ある程度の仕様は予想がついていました。細かな部分に手が加えられ、想像よりも実践的に仕上がった印象です。
エレクトロニックレンジファインダー
「エレクトロニックファインダー」とは、OVF上にEVFの小窓を表示する機能のこと。フォーカスエリアを拡大表示し、ピント合わせや確認をしやすくする仕組みです。
これはX100Tから搭載されました。X-Pro2では、新たに倍率100%表示が加わったことで、
- 画角
- 露出
- ホワイトバランス
もリアルタイムにモニターできるようになりました。
「フォーカスレバー」で、OVF使用時でもフォーカスエリアの移動が可能
X-Pro1では、OVF使用時にフォーカスエリアを移動しようとすると、
- カーソル▼ボタンを押す
- フォーカスエリアを移動
- シャッター半押し
と、かなりの手順を踏まなければなりません。
さらにOVF+MF使用時には、
- カーソル▼ボタンを押す
- EVFに切り替わる
- フォーカスエリアを移動
- シャッター半押し
- OVFに戻る
と、もうひと手間かける必要がありました。
けれどもX-Pro2では、EVFに切り替わることなく、フォーカスエリアの移動が可能になったのです。しかも新搭載された「フォーカスレバー」を使って、ダイレクトかつスムーズに操作が可能。とてもテンポよく撮影ができます。
忌まわしき”▼ボタンを押す”行為から解放されるので、OVF使用時でもシャッターチャンスを逃しにくくなります。
OVFの使用率が格段に上がる、と期待
X-Pro1のファインダーでは、OVFとEVF、それぞれできることがはっきりと分かれていました。
しかも、かなりEVF側の機能に頼ることが多く、OVFの使用率が低かったのは正直なところ。
図で説明すると、こんな感じ。円の大きさは、個人的な使用頻度を表しています。
それが今回、OVF周りの機能が強化されたことで、随分とOVFでできることが増えました。
これだけOVFでできることが増えると、積極的に使いたくなります。
「日常スナップはOVF、風景や動きものを撮るときはEVF」というように、使い分けを想像するだけで、今から胸が躍ります。
それほどX-Pro2のOVFは優秀です。
【朗報4】露出補正ダイヤルが大きくなって、固さも調整されていて、回しやすくなった。
一回りほど大きくなったおかげか、露出補正ダイヤルがとても回しやすくなっています。
X-Pro1のダイヤルは少し固めで、背面グリップからの奥まり具合が深く、操作するには少し力をかけつ必要がありました。
一方、X-Pro2のダイヤルは、大きさもさることながら、重過ぎず軽過ぎず、ちょうど良い固さに調整されています。奥まり具合も、少し改善。おかげでスムーズに操作ができ、集中して撮影に挑めます。
カタログには載らない地味な部分ではありますが、こうした細かなブラッシュアップが、初代機愛用者にとってはたまらない気持ちにさせてくれます。
あとがき
全ての機能を試せたわけではありません。ですが、ほんの少しの時間触っただけでも、”覚醒”と言っていいほど、質の高さが伝わってきます。
全般的にレスポンスが速く、キビキビと動く。X-Pro1操作時に発生した、ひっかかりやもたつきはほとんどありません。普通のステアリングからパワーステアリングに変更したぐらいの違いのように。
またシャッターの音が、とても上品で心地良いのも特筆すべき点。何かを撮らずとも、ただただシャッターを切りたくなってしまいます。
画質に関しては、発売前ということでSDカードへの保存&持ち帰りは禁止でした。なのでここで語ることはできません。今後、様々なメディアで実写画像がアップされるのを楽しみに待ちましょう。
PHOTO YODOBASHIさんあたりで、早くレビューされないかなぁ。
※この記事後、3月3日にレビューが掲載されました。
追記
以前、「X-Pro2に望むこと」と題して、記事をいくつか書きました。
ほとんど望みは叶ってませんね。
タッチフォーカスは、「フォーカスポイントの移動」という点ではフォーカスレバーが搭載されたことによって少し実現された感じです。
チルト式液晶モニターの非搭載は、素直に残念です。
マニュアル露出時の補正はどうなんでしょうね。できるのかな。確認するのを忘れてました。もうすぐ取扱説明書がダウンロードできるようになるみたいなので、その時確認してみます。