先日、大阪で行われた富士フイルムのXキャラバンというイベント。「GFX 50R」のレンタルサービスがあったので利用させてもらいました。選択したレンズは「GF63mm F2.8 R WR(以下GF63mm)」です。
本体+レンズで約80万円という、一昔前なら軽自動車が買えた値段。「Leica Q」より高額。
それを無料で使わせてもらえるのですから、いつものことながら感謝です。
というわけで、X-Pro2使いの視点を織り交ぜながら、レビューといきます。
FUJIFILM GFX 50R & GF63mm F2.8 R WR|外観&操作性
X-Pro2使いには、やっぱり重くてデカい
初めて手にしたときの印象は、でかっ!ぶ厚っ!
軽快&コンパクトという巷の評判は、”中判フォーマットにしては”という注釈を忘れてはいけません。普段使っているカメラがX-Pro2なら、間違っても「おっ、小さいじゃん!」なんて思いませんので。
センサーサイズが大きくなれば、本体は大きくなり、レンズも大きくなる。地球上で生きていく以上、物理の法則は超えられないわけです。
そうした法則は、もちろん重量にも当てはまります。
ストラップを首から下げ、撮影を始めたほんの数分の間は快適でした。その時は思いましたよ。「きっとバランスが良いから重さを感じないんだろう」って。
けれども、数十メートル歩いただけで印象は変わっちゃいました。「肩凝るわぁ」って。
GFX50R本体が約775gでGF63mmは約405g。合わせて約1,180g。一方X-Pro2は、Xf35mmF1.4との組み合わせだと約682g。40%以上軽い。
普段決して小さいとは思わないX-Pro2も、GFX50Rの後では、コンデジのような感覚で撮影できます。
GF63mmとの組み合わせは、取り回しは良好!
しかしながら、取り回し自体は悪くありません。
長時間、首からぶら下げた時の体への負担はあっても、1枚1枚シャッターを切るときの手首への負担は少ない。あの大きさ・重さにも関わらず、です。
それこそバランスが良いからでしょう。とりわけ、このGF63mmとの組み合わせは良好。絞りリングも適度なクリック感があって操作しやすく、鏡筒の太さも丁度いい。
X-Pro2にXF35mmF1.4があるように、GFX50RにはGF63mmありと思わせるレンズです。
操作性は、X-Pro2から地味にブラッシュアップ
またXシリーズで培ってきたインターフェースの力も大きい。
例えば、背面の突起したグリップは親指のかかりが絶妙で、縦横位置どちらに構えても、手がボディに馴染むようデザインされています。
ダイヤル類も健在。Xシリーズに慣れた方なら、迷うこと無く操作が可能。
ただしGFX50Rのダイヤルは、X-Pro2よりも固めにセッティングされているようで、親指一本で回すのはちょっとしんどいです。微妙に異なるレイアウトが影響しているのかもしれません。
X-Pro2との大きな違いは、ひとつに十字キーが無くなったこと。X-E3からの流れですね。
十字キーと言えば、X-Pro1の頃には色々と問題を抱えていました。
近接撮影時にマクロボタンを押すことを強制されたり、Fn機能の割り当てが少なかったり。X-Pro2では、改善されているものばかりです。
十字キーの存在に慣れきっているため、いつもの調子で押そうとし、違う違うってなる場面が何度もありました。
もうひとつは背面液晶がチルト式、しかもタッチ操作対応になったことがあげられます。
2つとも、かねてからX-Pro系への搭載を望んでいた機能。やっぱり、あると撮影の幅が断然広がります。特にローアングル撮影がめちゃくちゃラク。次機種X-Pro3(仮)では、ぜひとも搭載して欲しいものです。
これ良いなぁ、と思ったのが視度調節ダイヤル。引っ張り出すとロックが外れ、回して調節。元の位置に押し込めば、再びロックがかかる仕組み。
X-Pro2の視度調節ダイヤルは、不意に回ることが多かったので、この仕組みは魅力的です。と思ったら、すでにX-T3には採用済でした。
AF周りはX-Pro2並
AFについては、良くも悪くもX-Pro2並といったところ。X-Pro2を普段使っている感覚からすると、早くも遅くもありませんし、特別に精度が高いとも思いませんでした。
XF63mmのフォーカス方式が前群繰り出し方式というのも、XF35mmF1.4と同じで、似た感覚を覚えたのかもしれません。
FUJIFILM GFX 50R & GF63mm F2.8 R WR|画質
凄まじい解像力
GFX50Rの有効画素数は5,140万画素。X-Pro2の倍以上の画素数。数字の通り、ものすごく細かいところまで、潰れることなく記録されています。
中央部分を拡大した写真。ザラザラした壁面の一粒一粒を、きっちり描き分けているのは、お見事です。
GFX50Rもすごいんですが、当たり前のように解像してくるGF63mmもすごいです。やっぱり富士フイルムのレンズは素晴らしい。
もう1枚、解像力を愛でる写真。
幅の広い道路を1本挟んだ、少し遠いところにある建物ですが、やはりテクスチャを見事に表現しています。
雨ジミや、うっすら発生している苔やなんかも非常に生々しく感じられます。
確かに、このシステムで風景を撮影するのは楽しいでしょうね。
驚いたのは、奥側の建物の中にいる女性が来ている服の柄や、ビニール袋の取っ手部分までも判別できたこと。中途半端な望遠レンズはもう要りませんね。トリミングで十分です。
ボケ
ラージフォーマットを使う理由の一つは、”ボケ量”の多さにあります。キリッと立ったピント面から、一呼吸置くこと無く輪郭がとろけていく様は、実に気持ちが良いものです。
けれども、使ってみて思ったのは、X-Pro2+XF35mmF1.4の組み合わせも負けていない!という事実。
上がGFX50Rで撮影したもので、下がX-Pro2で撮影した写真。
焦点距離やF値、被写体との距離など、色々と条件は違うので、正確な比較ではありません。
けれども条件を整えさえすれば、APS-Cサイズのセンサーでも、これだけの”ボケ量”を生み出すことができるわけです。
前ボケも両方素敵。どちらがどちらか分かりますか?
上がGFX50Rで撮影したもので、下がX-Pro2です。
正直、ボケ量だけでは見分けがつきにくいように思うのですが、どうでしょう。ベンチの木目の精細さを見て、GFX50Rだと分かります。
XF35mmF1.4は、GF63mmより被写体に近づいて撮影することができます。
両レンズの最大撮影倍率は同じ(1.7倍)なので、XF35mmF1.4の方が被写体を大きく写すことができる。画面全体から受ける印象は、なかなかの迫力です。
ちなみに、ボケの”美しさ”については、GFX50R+GF63mmF2.8の方が一段上品に感じます。
階調が豊かさから「余裕」が生まれる
また階調の豊かさも、やっぱりラージフォーマットには叶いません。X-Pro2でも十分だと思っていましたが、比べると、その差は明らかです。
これだけ画面内に明暗差が激しい部分が混在しても、きっちりと白から黒まで光をつなげていくのはさすが!
焦ることなく、ゆっくりと確実に光と色をつなげていく。そこに生まれるのは「余裕」です。
立体感や空気感といったものも、この「余裕」が根本にあるように思います。
似たような画は、X-Pro2でも撮れます。
けれども「今まさに、そこに居る」というような、リアリティや没入感をより一層感じさせてくれるのは、GFX50Rの方です。
2次元表現である写真から3次元を感じ取る。その変換の過程で生まれるエネルギーのようなものが、ラージフォーマットの画面からは伝わってくる気がします。
あとがき
画質がモンスター級なのは間違いありませんが、お値段がねぇ。
X-Pro2、今ならX-T3に
「XF56mmF1.2 APD」や「XF90mm F2」を組み合わせた方が安くつきます。
これらの組み合わせなら画質は一級品。
機動性も高いので、色んなシーンで幸せになれます。決して買えない負け惜しみではありませんよー。