MTF曲線を眺めて妄想するシリーズ。
今回はフジノンレンズ「XF60mmF2.4 R Macro(以下XF60mmF2.4)」と「XF90mm F2 R LM WR(以下XF90mmF2)」です。実際に使用したレビューはこちらをどうぞ。
両者とも中望遠レンズに分類されますが、焦点距離や開放F値は違うし、おまけに一方はハーフマクロレンズということで、守備範囲も異なります。
そんな2本のレンズですが、MTF曲線はとてもよく似た形をしている、というのが興味深いところ。
描写も似ているのか、はたまた非なるものなのか。比較してみたいと思います。
XF60mmF2.4 MacroとXF90mmF2のMTF曲線比較
コントラスト(ヌケの良さ)
まずはコントラスト、いわゆるヌケの良さを表す空間周波数15本/mmmのグラフから。
完璧なXF90mmF2、優しいXF60mmF2
両レンズとも優秀な値を示す0.8どころか、0.9、部分によっては1.0に迫るほどの、ものすごい性能を発揮しています。
しかもM方向、S方向がびっちり揃っているので、収差はゼロに等しい。
特にXF90mmF2は、ほぼ全域で0.9を超えていて、完璧なまでの曲線(と言うか、もう直線)に驚かされます。これ以上のヌケの良さを持つレンズは、そう滅多にあるものではありません。
あえて言うなら、XF60mmF2.4は周辺部で性能が若干低下します。”ゆるむ”と表現する方が適切かな。いつでもビシッとした描写を見せるXF90mmF2に対し、開放で少し優しい表情を落とすXF60mmF2.4は、この辺りに違いがあるのかもしれません。
解像力
解像力を表す空間周波数45本/mmのグラフについても、両レンズはかなり高い性能を示しています。
両レンズとも、最高の解像力
レンズ中央から11mm付近まで、満足レベルの0.6をはるかに上回り、ほぼ0.7以上を記録。そこから周辺部分にかけて落ち込んでいきますが、最も低い値で、XF90mmF2は0.5、XF60mmF2.4でも0.4以上をキープしています。
実使用では0.4以上あれば十分な解像力、というのが持論なので、両レンズとも全域で解像力に不満を感じることはないレベル。
収差ゼロのXF90mmF2、柔らかなXF60mmF2.4
ここでもやはりXF90mmF2のゼロ収差っぷりは、特筆すべき点。M,S両方向の曲線が、終始びっちりとくっついて離れません。
一方、XF60mmF2.4ではS方向にゆらぎがあり、両曲線間に差分が発生しています。コントラスト同様、精緻ながらも若干の柔らかさを感じる描写は、こんなところに起因しているのかもしれません。
あとがき
非の打ち所のない描写のXF90mmF2と、
ほんの少しの「ゆるさ」を感じるXF60mmF2.4。
完璧に近いXF90mmF2の曲線と比べて浮き彫りになったこの「ゆるさ」は、言い換えればレンズの「味」や「クセ」のようなもの。MTF曲線的には2方向のズレが生み出しているんじゃないか、と妄想することができそうです。
そういや、XFレンズの中で神レンズと称される「XF35mmF1.4 R」や、
美しいボケが魅力の「XF56mmF1.2 R APD」だって、
全体的には高い値をキープしつつも、両方向で離れまくってますしね。
これがレンズのおもしろさ、ということなのかもしれません。