前回そして前々回同様、中望遠レンズの試写レビュー。
今回は、フジノンレンズ「XF90mm F2 R LM WR(以下XF90mmF2)」です。
35mm判換算で137mm相当の焦点距離は、特に「ポートレートに最適」な焦点距離と言われています。
ですが、これまでの流れや僕の好みもあって、ここでは「街角スナップ」での使用感をレポートしたいと思います。
XF90mmF2 R LM WRの使用感
”しっかりと支える”ことが必須なサイズ
贅沢な仕様
XF90mmF2は、XFレンズの単焦点シリーズの中で、最長の焦点距離を持つレンズです。開放値もF2と明るく、正面からのぞくと、吸い込まれそうなほどの大口径なレンズが用いられていることが確認できます。
さらにAF機構には、4つのリニア・モーターを組み込み、防塵・防滴・耐低温(-10℃)構造という、非常に贅沢な仕様になっています。
ズームレンズ並みのサイズ感
そのため他の単焦点レンズと比べると、サイズは大きく、重量は重め。僕が持っているレンズでいえば、望遠ズームの「XF55-200mmF3.5-4.8 R LM OIS(以下XF55-200mm)」と同じように感じました。
調べてみると、全長と重量がひとまわり違う程度。フォーカスリングのトルク感や、絞りリングのクリック感なども、非常によく似ています。
XF90mm | XF55-200mm | |
直 径 | 75mm | 75mm |
全 長 | 105mm | 118mm(ワイド端時) |
重 量 | 540g | 580g |
フィルター径 | Φ62mm | Φ62mm |
XF55-200mmについては、以下のページを参照してください。
左手は、”つかむ”ように支える
「XF56mm F1.2 R」や「XF60mm F2.4 R Macro」は、左手の親指と人差し指で”つまむ”ように支えましたが、XF90mmF2は全ての指を使って、”つかむ”ように支え、操作することになります。
他のXF単焦点レンズとは、一線を画するほどの重量級なレンズです。
街角スナップでは、少々窮屈な画角
遠くのものまできっちり描く
先にも書きましたが、XF90mmF2は、35mm判換算で137mm相当の焦点距離となります。中望遠とされるカテゴリの中で、最も”望遠寄り”のレンズです。
川幅50mほどある道頓堀川ですが、対岸からの撮影でも、被写体をしっかりと引き寄せた構図にすることができました。
解像力も素晴らしいレベルに達しています。船頭さんのジャンパーに描かれた小さな文字が、判別できるほどに結像しています。
ピント位置が別の場所にあるのでボケてはいますが、滲みは全く見られません。有効2430万画素を持つX-Pro2との組み合わせは最高です。
警戒されることのない距離感
長焦点レンズの利点は、被写体との間合いが取れること。
写真のネコが、たまたま人見知りをしない性格だったのかもしれませんが、全く警戒されることなく撮影することができました。
XF56mmやXF60mmが日本刀なら、XF90mmは長刀(なぎなた)
けれども、幅員4mにも満たない路地などでは、窮屈に感じる場面が多々ありました。
換算35mmや50mm相当のレンズに慣れていることもあるのでしょうね。最後まで自分の感覚をフィットさせることはできませんでした。
被写体に気付いたときには接近し過ぎていて、数歩の後退を余儀なくされる。下がった位置からファインダーをのぞき、構図の確認。それでもまだベストな構図にならないので、また数歩下がる。このくり返し。おかげで撮影のテンポがとても悪い一日になってしまいました。
それでも後退するだけのスペースがある場合は、時間をかければ撮影することできるのだから、まだマシです。悲しいのはスペースがないとき。仕方がないので、斜めから撮影することになるのですが、似たようなアングルの写真ばかりになってしまうので、つまらない。
同じ中望遠レンズでも、XF56mm F1.2 RやXF60mm F2.4 R Macroでは、このような窮屈感は感じませんでした。
例えるなら、日本刀と長刀のよう。路地を舞台とした決闘では、長刀は不利ということになりましょうか。もちろんXF56mm F1.2 RやXF60mm F2.4 R Macroが日本刀で、XF90mm F2 R LM WRが長刀です。
XF90mmF2 R LM WRの描写
解像力がものすごい
繰り返しになりますが、このレンズの解像力は驚異です。
写真は、片側3車線、中央分離帯のある道路対岸から撮影したビルです。地上8階建て、高さ30mほどの位置を見上げて写しているので、60mは離れていることになります。
中央より右側に位置するスリット状に開けられた窓。そこにかけられたブラインドの羽1枚1枚が確認できるのですから。
被写体が背景から浮き上がる
APS-Cフォーマットといえど、35mm判換算137mmの焦点距離に加え、開放F値2.0という大口径レンズなものですから、ボケないわけはありません。
主題が背景からスッと浮き上がるような、とても気持ちの良いボケかたです。
収差も極めて少なく、光源が生み出す玉ボケもとても綺麗に描きます。
ピント面は、エンタツ・アチャコの「タ」の文字。ほんの数センチずれただけで、とろけるように輪郭が失われていきます。けれども、しっかりと色彩は残したまま。
そんな高レベルな描写なものですから、適当にシャッターを押した写真でさえ、あたかもストーリーがあるかのように感じさせてくれます。
色乗り良し、質感表現良し
光がふんだんに当たっていようとなかろうと、色乗りの良さに変化はありません。
解像力と色彩描写に支えられた、質感表現や立体感は、言うまでもなくお見事なレベルです。
本当に、ただ写すだけで「作品」に仕上げてくれます。この場合、撮影者の力量はそっと横に置いておいてください。
あとがき
描写については、文句のつけどころのないレンズです。色乗りもよく、逆光耐性も高いように感じました。
X-Pro2との組み合わせでは、AFも速く、精度も上々。これだけの性能なのだから、このサイズ・重さでも致し方ないでしょう。フルサイズ判でこの写りなら、ひと回り大きくて、倍以上の重さにはなるでしょうから。
XF90mmF2の描写は完璧!といっても、過言ではないと思います。
けれども、スナップ用途がメインの僕の場合、中望遠レンズの購入候補からは外すことになりそうです。やはり焦点距離が長すぎることが理由。
脇道や路地は大好物で、積極的に突入したくなる性分で、間合いが取りにくくなるのは致命的です。
最短撮影距離は60cmと、かなり頑張ったスペックではあるので、ふと見つけた小物を撮るには問題ありません。
けれども僕は視力がかなり悪いので、小物を認識したタイミングでは、接近し過ぎてしまっているのです。フレームに収めようと思うと、3歩から5歩、下がらなければいけない。これはかなり厄介。
その点、XF56mm F1.2 RやXF60mm F2.4 R Macroでは、1、2歩下がるか、上体をのけ反るだけで撮影できていたので、とてもテンポが良い。
新しく発売されたXF50mmF2 R WRも含めた中から、購入を検討しようかと思います。
Xマウントレンズも、ずいぶんラインナップが増えましたね。
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