ダッチオーブンでパンを焼くとき、どれぐらいの火加減で焼けばいいのか悩みませんか?
熱源に木炭や薪を使う場合、強火・中火・弱火のはっきりとした区切りがありません。勘に頼りがちになることが悩みの原因のひとつです。
底が真っ黒に焦げたパンを、これまでにいくつも食べてきました。まさに”苦い”体験。
そうした失敗を重ねた結果、「こんな感じで焼けば上手くいく」という、いくつかのポイントを学びましたので、お伝えしたいと思います。
熱源と火力の関係
冒頭で書いたとおり、悩みの原因は、火力に対する明確な基準がないこと。なので、まずは熱源と火力の関係を整理しておきます。
ちなみに、ここでいう熱源とは「木炭」のことだとお考えください。木炭を使う理由は「どこでも手に入れることができるから」で、特別深い意味があるわけではありません。
火力と熱源の「配置」
熱源と火力の関係は、配置図で整理すると分かりやすいです。
熱源は均等に置くことが望ましいので(理由は後述)、熱せられるもの、ここではダッチオーブンの底(あるいはフタ)を等分して考えます。
弱火
弱火は、2分割した線上に、それぞれ熱源を配置するのが基本形です。結構、スカスカな印象だと思います。
1つ減らせば「弱火の弱火」、つまり「とろ火」になります。
中火
中火は、4分割した各線上に熱源を配置するのが基本形です。少し詰まりましたが、まだまだスペースに余裕のある印象です。
1つ減らして「中火の弱火」になります。奇数個なので、図では軸線からズレてしまっていますが、実際はできるだけ等しい面積を熱するような配置にしてください。
強火
強火は、8分割した線上に、残された隙間を埋めるように配置するのが基本形です。この段階では、かなり詰まってた感じになります。
さらに火力を上げる場合、まん中に1つ追加することになるのですが、そこまで火力を上げることは、ほとんどありません。
レイアウト上のポイントは、
- 均等に熱する
- 面積に対する熱源の密度
を意識することです。上記のイメージをひとつの目安に、詰まり具合(密度)を調整してみてください。
火力と熱源の「数」
おおまかな配置がイメージできると、必要な熱源の数は一目瞭然です。表にまとめておきます。
熱源の数 | |
弱火 | 2個±1コ |
中火 | 4個±1コ |
強火 | 8個±1コ |
2個、4個、8個という数字を基本に、調整していただければと思います。
火力と熱源の「大きさ」
火力は、熱源の数だけでなく、「大きさ」にも関係します。
食材との距離 | 火力 | |
大きい | 近い | →強い |
小さい | 遠い | →弱い |
単純に、大きければ火力が強く、小さければ火力が弱い、という話ではありません。大きなものほどダッチオーブンとの距離が近くなるため、結果的に火力が強くなる、ということです。
ちなみに、この原理はガスコンロの火力調整と同じです。
鍋底との距離 | |
弱火 | 直接、炎が当たらない |
中火 | 炎の先が少し触れる |
強火 | 炎が鍋底全体に当たっている |
ガスコンロの場合は、つまみやレバー操作ひとつで、鍋底との距離が調整できるから扱いやすいわけです。
安価な木炭は、大きさだけでなく、太さも揃っていないことが多いです。同程度のサイズのものを使うのがベストですが、それが難しければ、着火後に炭バサミで崩すなどして、できるだけ鍋底との距離を平均化するように心がけましょう。
均等にする理由
どんな食材でも言えることですが、食材の旨みを引き出すには、均等に熱を入れることが基本になります。
熱の当たり方に偏りがあると、焦げやパサつきを生み出し、美味しさが損なわれてしまいます。また少々極端な見方にはなりますが、熱が入っていない部分が残る可能性があるため、衛生的な問題も生じかねません。
木炭や薪の火力調整は、ガスコンロよりも難しいものです。けれども「均等」を心がけさえすれば、大きな失敗はしないと思います。
パンを焼くときは、弱火が基本
以上のことを踏まえ、ダッチオーブンでパンを焼くポイントを説明します。
熱伝導で焼く=[bake]
日本語では、パンを「焼く」と言うけれど、魚や肉を「”直火”で焼く」ようなイメージは捨ててください。正しくは、「”熱伝導”によって焼く」イメージです。英語で言うと「bake bread」。「roast」でも「grill」でもありません。
熱せられた空気でパン生地を温める仕組み。なのでダッチオーブンの底や側面、フタにパン生地を触れさせてはいけません。焦げたり、過度な乾燥の原因になります。
下は弱火、上は中火
熱源の数 | 熱源の置き場所 | |
強火 | 8個±1コ | – |
中火 | 4個±1コ | 上火(フタ) |
弱火 | 2個±1コ | 下火(底) |
強火は、一切使いません。底は「弱火」、フタは「中火」、もしくは「中火の弱火(マイナス1コ)」に設定しましょう。
強火にしてしまうと、パン生地の中に熱が伝わるより早く、外側が焼けてしまいます。その結果、固く分厚い皮のパンが出来上がってしまうのです。
木炭の数は、多くても中火の4個なので、少なく感じるかもしれません。けれども、ダッチオーブンは密閉性が高く、圧力効果も手伝って、想像する以上に加熱できます。中火程度の木炭があれば、十分な温度まで上昇します。
ふんわり、もっちり食感を楽しむためにも、火加減は中火以下に抑えることが重要です。
必ず、底網を使おう
さきほども書きましたが、「熱伝導で焼く」とは、食材の周りの「空気を温めて焼く」ということです。ダッチオーブンと食材の間には、空気の層が必要なのです。
上面
パンとフタとの間は、深さが10cm以上のダッチオーブンなら、くっつくことは少ないでしょう。それ以下だと、くっつくことが考えられるので、生地の大きさを小さくするなど調整が必要になります。
ちなみにユニフレーム製ダッチオーブンだと、10インチか12インチが該当します。
側面
側面との間は、発酵でパンが膨らむことで、どうしてもくっつきやすくなります。対策としては、生地を詰めすぎないことです。
僕が使っている12インチのダッチオーブンでは、ちょうど2斤分の生地を入れることができます。4家族でキャンプをすることが多いので、ついつい目一杯詰め込み、側面が焦げてしまう、といった失敗をしてきました。クッキングシートを敷いていても、関係なく焦げてしまいます。
欲張らず、適度な間隔が空く分量で焼くことをおすすめします。
下面
下面は、底網を使うことで、適度な空気層を作ることができます。
実をいうと、僕は最近まで底網を使ってきませんでした。クッキングシートは敷き込んでいたので、問題無しだと考えていました。「直火で焼く」イメージがあったことも、否定できません。
結果、失敗の連続。底の焦げたパンをいくつも生産しました。フタを開け、上から確認する分には絶妙な焼き加減に思えても、底は大火事だったのです。
ダッチオーブンの説明書には、「底網を置く」と明記されています。やはり説明書は読まなければいけませんね。反省です。
底網を使いはじめてからは、ばっちり美味しいパンが焼けるようになりました。焦げることなく、クッキングシートからもするりと剥がせます。
まとめ
ダッチオーブンでパンを焼くときの火加減をまとめると、
- 中火
- 弱火
- 均等
を心がけることがポイントです。じんわりと生地を熱で包み込むイメージを持つと、失敗することは少ないんじゃないかと思います。
生地の中まで熱が通ると、ふわぁっとパンの匂いが漂ってくるのが合図。そこから少し経てば、焼き上がりです。火にかけてから焼き上げまでは、おおよそ20〜30分といったところです。
焼きたてのパンと、淹れたてのコーヒーで、シンプルながらも最高の朝食をお楽しみください。
【追記】コスパの良いおすすめの木炭
「安価な木炭は、サイズがバラバラ」と書きました。
ホームセンターとかで売っている、6kgで798円ぐらいの木炭なんてそんなものだと思っていたのですが、同程度の金額で比較的、質の良いものを見つけました。
サウスフィールド(SOUTH FIELD)とは、スポーツ用品専門店であるアルペン・グループのプライベートブランドです。ここの木炭がとても良い。
約15cmほどに切り揃えられていて、綺麗に並んで箱詰めされています。太さに関しては、均一とまでは言えませんが、2cm〜4cm以内に収まっている印象です。
火の着き具合も良く、安価な木炭にありがちな、パチパチと火の粉が飛びまくる現象が少ないのが嬉しいです。
実店舗であれば、ホームセンターの木炭と変わらない値段で買うことができるので、近隣の方は間違いなくそちらの方がオススメです。