キャンプはもちろん、アウトドアで飲むコーヒーの美味しさは格別だ。
良い景色、綺麗な空気、解放感。どれが要因なのか、はたまたどれもが要因なのかは分からないが、家の中で飲むコーヒーよりも確かに美味しく感じる。僕にとってのアウトドアコーヒーは、今ではキャンプをする楽しみのひとつになっている。
そもそも僕はコーヒーが好きなのだ。普段から、1日2杯、多い時で3、4杯のコーヒーを飲む。決して「違いが分かる男」ではないが、朝から1杯も口にしなければ、何か物足りない気分に陥ってしまう「ライトな中毒者」になりつつある。
自宅にいれば気軽にコーヒーを淹れることができるけど、アウトドアではそれなりの準備が必要だ。道具は当然のこととして、シチュエーションに応じて複数のコーヒーを用意すべき、というのが僕の考えである。
美味しいコーヒーの条件
まずは美味しいコーヒーの条件についておさらいしよう。
新鮮
コーヒー豆は生鮮食品である。固くて黒っぽい色をしているので、一見、乾物のように思いがちだが、野菜や果物と同じく、悪条件の下では風味が落ちるのも早い。
挽きたて
コーヒーの風味は、豆を挽いた直後からどんどんと失われていく。挽きあがり間もないタイミングこそが、最も美味しいコーヒーが生まれる瞬間なのだ。
温度
コーヒーにとって、温度はきわめて重要な問題だ。沸騰したお湯と少し冷めたお湯では、抽出する時間と成分に明らかな差がでる。どちらが良いという話ではない。適正な温度とは、使う豆や焙煎の度合い、味の好みによって異なるのだ。
淹れたて
適正な抽出温度については、様々な意見があるだろう。けれども、冷めたコーヒーが美味しいという方は少数ではないかと思う。
冷めるということは、空気に触れ酸化が進むことを意味する。また熱によって膨らむべき香りがしぼんでしまい、風味が感じにくくなることでもある。やはりコーヒーは淹れたてが一番である。
第1のコーヒー|【挽きたて&淹れたて】ペーパードリップコーヒー
アウトドアで美味しいコーヒーを楽しむには、挽きたて&淹れたてのドリップコーヒーが最適だ。淹れるのも慣れればそれほど難しいことはなく、電源不要で全てが手動で行える。
それでも最低限、揃えなければいけないものはあるので順に見ていこう。
コーヒーミル
コーヒーミルとは、コーヒー豆を挽く道具のこと。
多くのミルが市販されていて迷うところだが、いくつかの理由から、僕はこのミルをおすすめしたい。
セラミック コーヒーミル ミニ(ポーレックス)
コンパクトなボディ
このミルの一番の特徴は、コンパクトであること。ハンドルを収納したときは、手の平にすっぽり収まってしまう。
コッヘルに収納することができるので、余計なスペースを必要としない。
ちなみに写真のコッヘルは、モンベルの「アルパインクッカー ディープ13」。
ステンレス製で頑丈
直径5cmのボディはステンレス製。筒という形状もあいまって、非常に頑丈な印象である。とてもじゃないけど、アウトドアにガラス製のミルを持ち出すことはできない。
ハンドルはおよそ2.5mm厚のスチールでできていて、曲がったり折れたりするような気配は全くない。表面は梨地仕上げ、エッジの処理も丁寧で、造りの良さが感じられる。このことはフタ・本体・受け容器の合わさる精度の高さからも言えることだ。
ハンドルホルダー付属
本体に付いている黒いシリコン製のベルトは「ハンドルホルダー」。これがあるおかげでフィールドでハンドルが無くなる確率はグンと減る。
また滑り止めの役割も兼ねているので、豆を挽くときに無駄な力をかけなくて済む。非常によく考えられた商品だと思う。
ドリッパー
お次はドリッパー。
単なるペーパーフィルターを固定する器具のように思っていたが、材質や形状、穴の数など、コーヒーの味に直接関わる要素が多く、実は奥の深いアイテムなのだ。
僕はこのドリッパーを使っている。
モンベル|O.D.コンパクトドリッパー2
重さ4g!畳むととってもコンパクト
コーヒーミルと同じく、コンパクトさが一番の魅力。重量なんて、たったの4g。”重量”という言葉の方が重く感じてしまう。
これもまたコッヘルに収納可能。しかもコーヒーミルと一緒に入れておける。これぐらいの薄さならどこにだってしまえるのだが、管理という意味でセットにしておけるのは大きなメリットだ。
お味は”すっきり目”な印象
約60マイクロメートルの目を持つマイクロ・メッシュ地でドリップすることによって、旨味が凝縮されたアロマオイルを透過し、豆本来の味を楽しめます。
(モンベル公式HPより引用)
この商品説明にグッときた。特に「旨みが凝縮」、「本来の味」という言葉が、自分にはとても響く言葉なんだと、はじめて知った瞬間である。
実際に使ってみた感想は、良く言えば「すっきりとした味」、悪く言えば「抽出不足」といった感じ。けれどもコーヒーの味に関しては、先にも書いたとおり、豆の挽き方やお湯の淹れ方にもよるので、この感想は鵜呑みにしないで欲しい。
自宅で使っているドリッパーが、メリタのものなので、ついつい同じように淹れてしまっているのが原因だろう。
豆は細かめに挽く、蒸らし時間は長め、湯温は低め、注湯スピードは遅くなど、O.D.コンパクトドリッパー2に適した淹れ方を研究しなければならないと感じている。
ケトル
ドリップ(drip)が【したたり、しずく】という意味であることからも分かるように、ドリップ式コーヒーの真髄は、”しずく”としてのコーヒーをいかに”したたらせるか”にある。
酸味を強めに出したいのなら速く、苦味を十分に出したいのなら遅く抽出する、というのが基本的な考え方。お湯の量だけでいえば、速く抽出したいのなら多く、遅く抽出したいのなら少なくということになる。
もちろんこれは一定時間に注ぐお湯の量のことだ。この加減が効くかどうかが、ケトルの性能ということになる。
僕が使っているのは、このケトル。
モンベル|アルパインケトル 16
注ぎ口が細く狭まっている
湯量の加減を容易にする決め手は、注ぎ口の形状にある。この部分が小さく、細くなっていれば、糸をひくようにお湯を注ぎ入れることが可能になる。
その点で、このケトルは合格だ。注ぎ口の内径は、およそ10mm。形は「しずく型」で、湯切れし易い構造になっている。
このように少量のお湯を途切れることなく出すことができるので、落としたいところにピンポイントで注湯が可能になる。
取り回しが良い
ハンドルは折畳式だが、本体との接合は結構きつめで、しっかりと自立する。折畳式にありがちなユルユル、カタカタとすることは一切ないので、安心してお湯を注ぐことができる。
アルミ製で軽く(187g)、片手でもラクに操作が行える。取り回しは非常に良い。
ただしフタと本体の密着度はほとんど無い。そのため、注ぐことに夢中になり、90度を超えて傾けてしまうと、ポロッとフタが落っこちてしまうので注意が必要だ。
[追記]上記内容は旧モデルについて。新モデルの使い勝手は、店頭で確認して欲しい。
ガスバーナー
キャンプの場合、コンロやバーナーといった熱源は、何かしら用意していることだろう。けれども半日ほどのレジャーや、ちょっと公園へ遊びに行くぐらいのときには、そもそも熱源を持っていくことは少ないと思う。
そんなときに小さなバーナーをひとつ荷物に忍ばせておけば、コーヒーはもちろん、インスタントラーメンだって作れるので、かなり自由度が高まる。
イワタニ|カセットガス ジュニアバーナー
カセットガスが使える
カセットガスが使える点は、多くの点でメリットだ。
操作は簡単だし、どこに行っても手に入れることができる。コンビニにも売っているので、いつでも手に入れられる、と言っても過言ではない。
備蓄品として置いているご家庭も多いだろうから、有効期限が迫ったガス缶を使うのを理由に、ハイキングを計画するのも楽しそうだ。
最小
カセットガスが使えるバーナーのなかで、最も小さなバーナーである。僕の握りこぶしよりも一回り大きいほどだ。
小さいといっても造りはいたって頑丈で、お湯で満タンのアルパインクッカー ディープ13(約800g)を乗せたぐらいではビクともしない。構造もシンプルなので、壊れることは少ないだろう。
これらのアイテムがあれば、近所の公園でも挽きたて&淹れたてのコーヒーが楽しめる。
実際、桜や紅葉の季節には、子供を遊ばせながら夫婦、有人とティータイムを満喫している。いつもの公園が、ちょっと豊かな空間に感じられるのである。
第2のコーヒー|【淹れたて】ドリップバッグコーヒー
お気に入りの道具の紹介に、ずいぶんと文字数を使ってしまったが、メインテーマはここからなので続けて読んでほしい。
豆を挽いて、そのあいだにお湯を沸かし、じっくりと美味しさ成分を抽出しながら一杯のコーヒーを完成させる。現実には、これぐらい時間をかけられることはあまりない。ついつい遊びや談笑にふけてしまい、タイミングを逃してしまう。
それでも体はコーヒーを欲する。
そんなときに活躍するのが、粉とドリッパーがパッケージングされた「ドリップバッグコーヒー」だ。
これならば豆を挽く行程が減るので、大幅に時間を短縮することができる。一応「淹れたて」の雰囲気は楽しめるので、保険として持って行くことをおすすめする。と言いながら、結構出番は多いのだが。
第3のコーヒー|【注湯のみ】スティックコーヒー
最後におすすめするのは、いわゆる「インスタントコーヒー」。
これまで美味しいコーヒーを飲むためには、挽きたて&淹れたてであることが重要だと言ってきた。その主張に嘘はない。
けれども、先ほどにも少し触れたが、その美味しさを得るためには相応の”時間”と”手間”が必要だ。時間がなければ、あるいは手間がかけれなければ、最悪の場合、コーヒーを飲むことはできない、ということだ。
ライトとはいっても中毒者の端くれなので、そのような事態は避けたいところ。そんなピンチを救ってくれるのが「スティックコーヒー」である
なんといってもお湯を注ぐだけ、という手軽さが頼もしい。1杯分が個装になっているので、管理するのに便利で、分量を間違えることもない。
空袋を棒状に丸めればマドラーとして使えるので、別途スプーンなど、かきまぜるための余分な道具も必要としない。まぁ、他人には積極的におすすめしない方法だが。
スティックコーヒーが重宝する場面は、なにもピンチに限ったわけではない。
現在はブラックコーヒー以外にも、カフェオレや紅茶オレ、抹茶オレやノンカフェインタイプなど、実に様々な商品が販売されている。
これだけバラエティに富んでいれば、コーヒーが苦手な方や子供、妊婦さんなども一緒にティータイムを楽しむことができるはずだ。
また深夜、焚き火を囲みながらおしゃべりを楽しんでいるとき、なぜか甘いものが欲しくなる。カフェオレやキャラメルオレをさらりと飲むことができれば、1日の疲れも癒され、さらに会話の火が灯し続けられることだろう。
あとがき
「結局のところコーヒーだったら何でもいいんじゃないの?」という声が聞こえてきそうだが、さすがに缶コーヒーというのは味気ない。
スティックコーヒーですら、缶コーヒーと比べると、味わい深さに雲泥の差がある。しかも最近のスティックコーヒーは、とても美味しいのだから。
こうして整理してみると、僕にとっての美味しいコーヒーの分かれ目は「淹れたて」にあることが分かる。
お湯を注ぐだけといっても、スティックコーヒーは間違いなく「淹れたて」だ。缶コーヒーはそうではない。だからこその缶コーヒーだったりもするわけで。
まとめると、
- アウトドアに持って行くコーヒーは3種類。
- かけれる時間や味の好みによって、3種類のコーヒーを使い分ける。
- お湯を沸かすための道具(ケトル、バーナー)は最低限必要。
ということになる。
「できたてほやほや」って、それだけで美味しさの要素なんだと思う。