駅前某カメラ店にて、「XF10(FUJIFILM)」を触ってきました。
発売前に書いた以下の記事
の不明瞭だった記述の確認も含めて、感想を書き連ねたいと思います。
XF10(FUJIFILM)|店頭インプレッション
軽い
約278.9g(バッテリー、メモリーカード込)は、やっぱり軽い。縦横比のバランスからなのか、数値ほど小さく見えないボディなのですが、持ってみると良い意味で裏切られます。
手持ちカメラとの比較で言えば、X30は約423gで語るまでもなく。TG-5は約250gで1割ほど軽いわけですが、感覚的には誤差程度。実使用上は、同じぐらい取り回しが良いと感じました。
ライバル機と目されるGRⅡ(RICOH)が約251gなので、スナップシューター機としては、これぐらいの重量が落としどころなのかもしれません。これ以上軽くしてしまうと、次は手ブレが心配になってきます。
「もよ〜ん」としたフィーリング
軽さの次に伝わってくるのは、「もよ〜ん」とした残念な感覚。原因を考えました。
縦横比問題
まずはボディの縦横比について。
XF10 | GRⅡ | X70 | X30 | TG-5 | RX100 | |
重さ | 278.9g | 251g | 340g | 423g | 250g | 240g |
幅 | 112.5mm | 117.0mm | 112.5mm | 118.7mm | 113mm | 101.6mm |
高さ | 64.4mm | 62.8mm | 64.4mm | 71.6mm | 66mm | 58.1mm |
厚み | 41.0mm | 34.7mm | 44.4mm | 60.3mm
(35mm) |
31.9mm | 35.9mm |
縦横比 | 1:1.75 | 1:1.86 | 1:1.75 | 1:1.65 | 1:1.71 | 1:1.75 |
GRⅡに比べると、高さがあって幅が短い。ものすごーく極端にデフォルメするなら、より正方形に近いフォルムということです。良く言えば、コロンとしていて可愛らしい、悪く言えば、野暮ったい。そんなフォルム。GRⅡのように、横に長い長方形の方がスタイリッシュに感じます。とは言え、RX100と同じ比率。あちらに「もよ~ん」は感じません。なので真の原因ではないようです。
プラスチック素材
お次は素材。
XF10のボディは、アルミっぽい風合いを醸し出してはいるけれどプラスチック製。展示はシャンパンゴールドのみでしたが、仕上がりの上品さは十分に見て取ることができました。
けれども、持ってみると安っぽさが伝わってきます。カッチリしていないというか、良いモノ感がないんですよね。軽いことも裏目に出てしまっているのか、おもちゃっぽく感じてしまいます。
普段使っているカメラが、アルミニウムやマグネシウムといった金属ボディなこともあって、無意識にハードルが高くなっているようです。
そういやE-P1からE-PL1に買い替えたときも、同じようなことを考えていたことを思い出します。
アール掛かったエッジの処理(主にグリップ)
各部エッジの処理がアール掛かっているのも、気に入りません。特に、実際に手に触れる部分であるグリップは、形状も含め、「もよ~ん」の最大原因じゃないかと。
グリップなんて中指一本が引っ掛かれば機能するんですから、上から下まで膨らませる必要はないと思うんですよね。X70のように、ちょこっとあれば十分。重いレンズをぶら下げるわけじゃないので、極論を言えば、無くてもいいぐらい。
と、要不要論は置いとくにしても、無駄に体積が増えることで、「つまむ」から「つかむ」にならざるを得ない部分があり「粋」じゃない。さらに丸みを帯びているせいで、まるで小学生が使う「ふでばこ」のような、樹脂製の何かを持っている感覚に陥ります。
同じプラスチックボディでも、TG-5のグリップなんかはエッジが立っていて、メカメカしい面構えをしています。握ると剛性感や良いモノ感が伝わってくるし、しっかりボディを保持できます。
このことから、XF10に触れて感じる「もよ~ん」の正体が、素材ではなく、エッジの処理にあるんじゃないかと考えるわけです。
行き過ぎたミニマルデザイン
「ミニマリズム」という言葉が市民権を得てから、はや数年。Xシリーズでも、X-E3からデザイン言語に用いられるようになりました。公式にアナウンスされているわけではありませんが、XF10もその潮流に乗せたデザインであることは間違いないでしょう。
X70に備わっていたダイヤルやボタン、レバー類が大幅に無くなり、ずいぶんとスッキリしたレイアウト。おかげで操作はシンプルになり、誰でも気軽に使えるカメラになりました、とさ。
商品開発的には、コンセプト通りの機種に仕上がったのでしょう。なので、ここでカメラ好きおじさんが何か物言いをするのは、ただの〇〇ハラになりかねます。でもね、ひとつだけ言わせてください。
「面白くねぇ」
ここまでくると、手にとってシャッターを押すだけの、ただの箱。感覚的には「写ルンです」と変わりません。いや、ファインダーとフィルム巻き上げ動作があるだけ、あちらのほうが楽しいことをしている気になります。値段相応のチープさも愛おしい。
誰でも気軽に使えることを目的にするなら、X70に搭載されていた「オートモード切換レバー」で事足りるのでは?
そもそも、あの”のっぺり&つるり”としたボディに、所有欲や愛着が湧く自信がありません。僕にはスマートすぎるんですね。”ブタ鼻”と揶揄されることが多かったX30は、可愛くて仕方がないんですけどね。
やっぱりレンズ保護フィルターは装着できない
危惧していた通り、XF10にはレンズ保護フィルターを装着できるようなネジが切ってありません。専用のレンズフードもありませんし、カバンからパッと出してサッと撮影なんて使い方は難しそうです。
RX100用のアクセサリーを使ってフィルター装着を実現されている方もおられますね。
両面テープで固定する方法なので、取り付けには慎重な判断が必要。フィルターが剥き出しで厚みも増す分、ポケットにインするのは躊躇するかな。
AF速度が遅い
いや、多分それなりの速度は出ていると思うんですよ。でもX-Pro2やTG-5を使っている限り、「キビキビ合焦する」とは、どうしても評価できません。実際、X30の方が速いんじゃないかな。
でも不思議な話なんですよね。現時点で最新モデルであるXF10が、何世代も前の機種と同じAFスピードに感じることが。カジュアルラインといっても、AFは速いに越したことはないわけで。おそらく廉価版プロセッサーを採用しているところに原因があるんじゃないかと推測します。
コストカットのためとはいえ、AFスピードを疎かにしてしまっては、XF10からXシリーズを使い始めた方が離れて行ってしまうんじゃないかと心配になります。
もしもXF10のもっさり感が気になった方は、ぜひとも画像処理エンジンにX-Processor Proを搭載した機種(X-Pro2,X-T2、X-E3、X-H1、X-T20)を使ってみてください。めちゃんこ快適ですよ。
あとがき
ちょこちょこネットに上がってくる作例を見る限り、描き出す画の傾向も、X-Trans機とは趣が違うようです。なんというか、艶や色気のようなものを感じません。同じセンサーとプロセッサーを積んでいるはずのX-T100では、レンズが選べるおかげなのか、魅力的な作例もあるのですが。
となると、X70と(おそらく)同じXF10のレンズは、ベイヤーセンサーとの相性が悪い、ということなのでしょうか。この辺りの真相は、今後増えてくる作例を見て判断したいと思います。
残念ですが、僕は気長にX70の後継機を待つとします。